ライセンス管理の始め方

今回は、前回お届けした「開始前に確認すべき重要なこと」をふまえ、ライセンス管理を始める際に初期段階でのチャレンジとなる、社内承認と現状把握のポイントおよび、その他重要なポイントについてご紹介していきます。

ライセンス管理の始め方の図

社内承認を得るために

トップダウン案件でない場合、実際にライセンス管理を始めるにあたって最初の関門となるのが、管理体制の構築と管理ソリューション導入に対して、社内承認を得ることです。承認を得るために必要なポイントとしては、主に次のようなものがあります。

目的と投資対効果を明確化

上司や経営層へ効果的に働きかけるためには、目的を明確化し、その目的を達成すると組織にとってどんなメリットが実現できるのかを伝える必要がある。同時に、リスクとコストを削減するために、まずは適切な管理を行うための投資が必要、という投資対効果を意識した働きかけも必要。【図2】

ライセンス管理の投資対効果

リスク / コストを定性的・定量的に提示

サンプリングやリスクアセスメントの結果(=事実)を元に、組織へのリスクやメリットを説明する。またやらない場合のリスクとコスト増を定性的、定量的(金額換算)に提示する。

組織の方向性と合致した効果をアピール

管理を行うことで得られる、コスト削減(不要支出の削減)、標準化推進、情報セキュリティへの寄与、BCPやグローバルビジネスリスクの削減などの効果を、組織の課題や方向性と合致させることにより、承認のハードルを下げることができる。

経営責任発生リスクを明示

外部監査などで発覚したライセンス不備による突然のコスト発生は、組織の長による株主への説明責任や議会説明を生じさせ、経営責任を問われる可能性もあることにも言及しておく。

現状把握のポイント

現状把握を行う上で留意すべきポイントとしては、次のようなことがあります。

事前計画の必要性

しっかりとした事業計画なしに現状把握を実行した場合、途中発生する様々な事態に都度対処することになり、問題が長期化したり、現場負荷が高まる恐れがあります。実施することの主旨と理由を明確にし、スケジュール、フェーズとステップ、連絡と承認プロセスなどを含めて、適切な計画を事前に立てることにより、現状把握の期間と負荷を最小限に抑えることができます。

現場担当者との連携

事前の研修、トレーニングにも関係しますが、現場で現状把握を支持、推進してくれる人や、部門のIT担当者との連携や情報提供も、現状把握をスムーズに進めるポイントになります。

対象範囲の明確化

網羅性の目標をどこまでとするかにもよりますが、具体的にはどこまでを対象組織とするか、サーバーなど、どの機器を対象にするかといった範囲の明確化を行う必要があります。

棚卸中の廃棄と購入ルールを事前に決定

現状把握にはある程度の期間がかかりますので、その間の廃棄と購入のルールをあらかじめ設定しておく必要があります。

その他のポイント

端末入れ替え時

適切な計画と実施による、網羅性の高い現状把握ができれば理想ですが、組織によっては難しい場合もあるかと思います。そのような場合は、インベントリツールの導入により、端末にどのようなソフトウェアが入っているか把握し、またソフトウェア辞書と突合(とつごう)することで有償・無償の判別もかなり可能になります。

また、端末の購入申請、導入、廃棄に関するルールを作成、運用を行うことで、通常の組織であれば5〜7年程度でかなりの現状把握が可能になります。特に大規模な端末の入れ替えを行う際には、ライセンス管理の要素を入れて実行することを強くお勧めします。もちろん、この方法をとった場合、入れ替わるまでの期間はリスクを抱えた状態になりますので、留意が必要です。

運用で100%へ

実運用前に100%の網羅性と正確性を持って現状把握ができた、という組織を筆者は知りません。現代においてはそれほどさまざまなパソコン端末が利用されており、また組織内で管理対象外となってしまっている、個人や部門管理の古い端末も多くあるのが実情です。実運用前に対象範囲内の端末の9割程度が把握されたと考えられる場合、実運用を実施しつつ100%の把握と管理に近づけていく、という形が現実的かと思います。

専門家への相談、支援依頼

法律の問題は弁護士へ、税金は税理士へ相談するのが一般的かと思いますが、ライセンスについては、専門家への相談がまだまだ行われないケースが多いようです。独自で監査への対応や現状把握を行った結果、何度も社内調査を繰り返し、正確性も網羅性も担保されていない情報を収集、現場や担当組織が疲弊してしまう、というケースも多くあります。いつでも相談できる顧問としてライセンス専門家と関係を持ち、購入や契約、管理手法や監査対策について速やかに助言を求めることをお勧めします。

まとめ

今回お伝えしたポイントはあくまで一例であり、実際には組織の状況によって、ライセンス管理の始め方は様々あるかと思います。しかし大切なことは、ポイントを押さえた計画をしっかりと立てた上で、まずはライセンス管理を始めてみることだと思います。


(「SKYSEA Client View NEWS vol.37」 2014年7月掲載)

酒井英之氏

株式会社ライセンシング ソリューションズ
代表取締役
相田 雄二 氏
・公認SAMコンサルタント
・ISO SC7 WG21 エキスパート

アクセンチュア、SAP Japan等でのコンサルティング経験を経て、2000年より日本マイクロソフトにて、販売店関連の業務管理とライセンス販売契約管理を行い、2003年より日本と韓国のチームを統括する。2006年9月以後、本社組織にて、グローバル企業をはじめとする顧客別のライセンス契約の設計とその最終条件交渉に従事。2009年10月より3年間、日本マイクロソフトにおける、海賊版対策とライセンスコンプライアンス部門の総責任者となった後、2012年9月に退職。2013年4月、株式会社ライセンシング ソリューションズを立ち上げる。

Webサイト:http://www.licensingsol.com/

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