INTERVIEW ▶ 日本マイクロソフト株式会社

進化をし続ける「Hyper-V®」とストレージのさらなる強化 Server OS としてだけではないWindows Server® 2012 R2の実力

「クラウド OS」として開発されたWindows Server 2012。その後継バージョンであるWindows Server 2012 R2が、2013年10月にリリースされました。
性能、安定性、拡張性といったOSとしての基本仕様はそのままに、仮想化やストレージなどの機能を強化。エンタープライズ クラスのシステムへも対応できる力を持ちつつ、高いコストパフォーマンスを発揮するServer OSへと進化したWindows Server 2012 R2について、ご担当者様にお話を伺いました。

「Hyper-V®」は仮想環境で快適なパフォーマンスを発揮するのに、十分なレベルに達しています

強化された「Hyper-V」のポイントと、他社の仮想化技術と比較して優れているところをお聞かせください。

伊賀絵理子氏

図1は、Windows Server 2008 R2からWindows Server 2012 R2までの「Hyper-V」に関する基本仕様を比較したものです。Windows Server 2012とWindows Server 2012 R2はまったく同じスペックですが、Windows Server 2012 R2では高スペックを維持した上で、さらにネットワークやストレージ機能を強化しました。仮想環境でのパフォーマンスに関しても、仮想マシン1台のメモリ「1TB」に対してプロセッサを64コア割り当てることができますので、エンタープライズ クラスでも十分と言えるレベルに達しているのではないでしょうか。

「Hyper-V」が他社の仮想化技術より優れている点としては、「コストメリット」と「サポート体制」が挙げられます。

図1:基本仕様は前バージョンを踏襲したWindows Server 2012 R2

まずコストメリットですが、ホストOSを必要としないハイパーバイザー型の仮想環境でWindows Serverをご利用いただく場合、他社製品は別途ハイパーバイザーソフトウェアのライセンスが必要になります。それに対して「Hyper-V」は、「Windows Server 2012 R2」の「Datacenter」エディションをご購入いただければ、「Hyper-V」上でWindows Serverを何台動かしても追加費用が必要なく、コストメリットを実感いただけると思います。

次にサポート体制です。ちょうどWindows XPやMicrosoft Office 2003のサポートライフサイクルが世間をにぎわしていますが、弊社はサポートライフサイクルを最短でも10年とアナウンスしています。他社は5年くらいで終了してしまうことがあるようですが、さまざまな要因ですぐにServer OSを切り替えることのできないお客様もいらっしゃいますので、長期間のサポート体制は、お客様に安心してご利用いただける理由の一つとして評価いただいています。

近年、企業や組織で仮想化が多用され、仮想環境の管理が注目されています。
「Hyper-V」を管理するためのツールSCVMM(System Center 2012 R2 Virtual Machine Manager)は、仮想マシンを同時に何台くらい稼働させるユーザーがターゲットなのでしょうか?

相原健一氏

1〜2台の仮想環境であれば、「Hyper-V」に標準添付されている「Hyper-V マネージャー」で十分に管理していただけると思います。例えば、「Hyper-V マネージャー」のコンソールで仮想環境のPCを確認しようとして、リストをスクロールしなければ全台が確認できないようであれば、SCVMMに切り替えていただくタイミングなのではないかと思います。

また、ライブラリでテンプレートを管理したいとか、ネットワークの仮想化を実装したいといった要望をお持ちであれば、多機能なSCVMMは欠かせないツールだと言えるのではないでしょうか。そのほかにも、仮想マシンを停止させずにホストPCのハードウェアメンテナンスや部品の交換が可能な「ライブマイグレーション」を活用される場合、「Hyper-V マネージャー」ではどのホスト上にどの仮想マシンがあるかを確認できないため、SCVMMの利用がお勧めです。図2

図1:「SKYSEA Client View」のサーバー構成の場合

「重複除去」や「記憶域プール」を活用することでコストメリットを実感いただけます

エンタープライズ クラス以外のユーザーでは、情報システム部員が少なく、サーバーの移行を進められないことが多いのですが、「これならWindows Server 2012 R2に移行したい」と思えるような機能はありますか?

Windows Server 2012 R2はストレージ機能が向上していますので、「重複除去」や「記憶域プール」といった機能はかなり活用いただけるのではないでしょうか。

「重複除去」というのは、一般的には重複排除と呼ばれるデータの圧縮保存機能です。仮想マシンのハードディスク内には、OSイメージのバックアップが取られていることも多く、図3のように重複しているデータが多数存在します。システム側で、それらのデータの構造が同じであると判断すると1つのデータにまとめ、元のデータにはポインターだけを残すというのが「重複除去」の仕組みです。仮想ハードディスクではデータサイズを8割以上圧縮することもでき、例えば、100GBのハードディスクに「重複除去」を実行した場合、実使用量は20GBくらいになります。また、Microsoft Officeのドキュメントなどはユーザーごとに内容が違うため、「重複除去」に該当するデータは極めて少ないと言われていますが、実際に私どもの社内でファイルサーバーに「重複除去」を実行しますと、ストレージの利用量は実行前の状態と比較して18%〜20%圧縮されています。

お客様にとって、ストレージの購入はもっともコストが必要となる部分だと思いますので、「重複除去」によってストレージの追加購入を抑制できれば、コスト削減の面でも非常に効果的なのではないでしょうか。

図3:ストレージデータの重複除去

続いて「記憶域プール」ですが、これは、複数台の物理ディスクを1つにまとめて「プール」することができる機能です。容量の異なる複数の物理ディスクをまとめて大容量ディスク(仮想ディスク)として見せることができるだけでなく、将来を見越して実際の物理ディスクを足した容量よりも大きなサイズを割り当てておくことができます。例えば、物理ディスクの合計が20TBしかない場合でも、あらかじめ200TBの仮想ディスク容量を割り当てておき、使用量が18TBまで達した段階でディスクを購入して実際の容量を増やすといったことが可能です。ディスクの価格は年々下がっており、すぐに購入するよりも1年後に購入した方が安価になっていることが多いので、取りあえず「記憶域プール」で仮想的に割り当てる容量を切り出しておいて、実際に必要になったときに購入することでコストを抑えるというようにご活用いただけます。図4

図4:物理ディスクを複数台まとめてプールすることで大容量化

また、今までは物理ディスクを追加すると、共有先のドライブのドライブレターがCドライブやDドライブなどに分かれてしまい、同一ドライブに見せるためにはOS側から再構築しなければなりませんでした。さらに、システムを停止させるといった対応も必要でしたが、「記憶域プール」ではそういった面倒な作業が必要ないため、情報システム部門の方々からストレージ管理業務の負担が軽減できると評価いただいています。

加えて、冗長機能をOS標準で搭載していますので、Windows Server自体をストレージとして使っていただけます。ストレージコストを抑えたいお客様にとって、Windows Server 2012 R2は有効に活用いただけるのではないでしょうか。Windows ServerをServer OSとしてだけでなく、ファイルサーバーとして、また仮想化システムとしても、どんどん使っていただいて、コスト削減にお役立ていただければと考えています。

中小企業のユーザーは、諸般の事情からサーバーデータのバックアップを取られていないことも多いのですが、貴社のクラウドサービス「Windows Azure」は「Hyper-V」の仮想環境にあるデータのバックアップ先としても有効なのでしょうか?

そうですね。ローカルにあるデータもすべて「Windows Azure」にバックアップが可能です。テープ装置の場合は、定期的にテープの交換やクリーニングをしなければいけないので、そうした手間がバックアップを取らない要因の一つだと思います。クラウド プラットフォームである「Windows Azure」には、そういった手間も必要ありません。また、安価な外付けのハードディスクに大切なデータを保存した結果、データが消えてしまったというような事例の解決策としても「Windows Azure」を活用いただけるのではないでしょうか。

特に災害対策を考えたときに、「Windows Azure」でクラウド上にバックアップを取るというのは、中小企業のお客様にとってはもっとも有効な手段の一つだと思います。

サービスパックをお待ちいただかなくても安心してお使いいただけます

以前は3年くらいの周期で製品をリリースされていましたが、今後はWindows OSと同様にServer OSに関しても「ラピッドリリース」を取り入れて、短い周期でリリースされていくのでしょうか?

はい。今後のWindows製品は「ラピッドリリース」が主流になっていくと思います。「ラピッドリリース」を行う理由の一つには、クラウドの普及があります。一般にクラウドに関連した製品のバージョンアップは頻繁に行われており、オンプレミス以上にクラウドのテクノロジーは進化のスピードが速い傾向にあります。弊社でもクラウドプラットフォームの「Windows Azure」で得たナレッジやテクノロジーを、Windows製品にどんどん取り入れていくというスタイルが定着しつつあります。

もちろん、勝手にリリースを早めるわけではなく、お客様の状況を考慮しつつ、最新技術やセキュリティを担保しながらリリースを続けていきます。冒頭に申しましたように、弊社は製品リリース後10年間サポートを行うと明言しておりますので、お客様のタイミングに合わせて、例えばすぐに最新バージョンに切り替えることができなくても、5年サイクルでリプレースするといったように、柔軟に対応していただければと考えています。

また、これまでは安定性への懸念から、Server OSの切り替えはサービスパックが出るまでお待ちになるお客様が少なくなかったかと思います。しかし、Windows Server 2012 R2はクラウド上のプロダクション環境での実績を積んでいますので、サービスパックをお待ちいただかなくても安心してお使いいただけます。

リリース間隔が短くなると、情報システム部門では自社導入のための検証頻度が高くなり、導入をサポートするベンダーでも負荷が高くなることが予想されます。貴社でのフォロー体制や対策についてお聞かせください。

Windows Server 2012 R2の発売時には、商品紹介の場となるラウンチイベントを開催したり、ナレッジ集を提供したりしました。そのほかにも、弊社のサポート部隊からベンダーSE様向けのトレーニングを提供するなど、できるだけ早く情報提供を行うようにしています。全国に情報伝達を行き渡らせることが難しく課題でもありますが、SE様向けのトレーニングを各地で開催し、情報が素早く全国に伝わるようにしていきたいと考えています。

Windows Server 2012から、Windows 8と同様のUIスタイルに変わったことで、今まで利用していた手順書も大幅に変更する必要があるなど、実運用を考えると敷居が高い印象もあります。従来のサーバーを使用していた情報システム担当者は戸惑われることもあるのではないでしょうか?

確かに最初は戸惑われるかもしれませんが、慣れてくるとこれまでより管理効率が高いと思います。例えば、サーバーを管理するためのコンソールとして、Windows Server 2008から用意している「サーバーマネージャー」の活用です。サーバーに関する情報の確認、役割や機能の追加など、サーバーに必要とされる運用管理機能が集約されているので、以前のようにツールの起動に迷うことがありません。

さらにWindows Server 2012からは、自分がログオンしているローカルのサーバーだけではなく、複数のサーバーをまとめて管理できるようになり、各コンピューターに対する「コンピューターの管理」や「リモートデスクトップ接続」などの管理ツールがすぐに起動できるようになりました。また、同時に複数のサーバーに対してツールを起動し、設定を適用することが可能です。

Windows Server 2012で変更されたライセンス体系についてお聞かせください。

従来のWindows Server 2008 R2では、大きく分けると「Datacenter」「Enterprise」「Standard」の3つのエディションがあり、機能が若干異なっていました。Windows Server 2012では「Enterprise」を廃止して、2つのエディションになりましたが、「Datacenter」と「Standard」の機能差はまったくありません。違いは、仮想マシンのインスタンス数に関してのみです。「Standard」は2つまで、「Datacenter」は無制限に使用できますので、仮想化環境が1〜2台であれば「Standard」を、仮想環境を主に活用しているというお客様には「Datacenter」を選んでいただくというように、ライセンス体系をシンプルにしました図5。合わせて「System Center 2012」のライセンスも「Datacenter」と「Standard」のみに変更し、運用管理製品のご購入は以前よりわかりやすくなったと思います。

図5:シンプルになったWindows Serverのライセンス体系

(「SKYSEA Client View NEWS vol.34」 2014年1月掲載)

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