
SQLインジェクションとは? 仕組みや対策方法について例を用いて徹底解説

SQLインジェクションとは、サイバー攻撃の手法の一つで、Webサイトやシステムのデータベースに不正なコードを挿入して実行させる攻撃手法です。この攻撃を受けると、顧客の個人情報や企業の機密情報が漏洩したり、改ざんされたりします。その結果、企業の信用失墜や経済的損失、競争上の不利益を引き起こします。この記事では、SQLインジェクション攻撃の手法や仕組み、対策方法などを詳しくご紹介します。
SQLインジェクションとは?
SQLインジェクションは、データベースに不正にアクセスする攻撃で、WebサイトやWebアプリケーションのセキュリティの脆弱性を利用して行われます。
データベースは、情報を整理して保存するためのシステムで、例えば顧客情報や商品情報などを管理するために使われます。そして、データベースを操作するための言語が「SQL(Structured Query Language)」です。SQLを使うと、データベースに対してデータの追加や検索、更新、削除などの操作ができます。
次に「インジェクション(injection)」は「注入」や「挿入」という意味の英単語で、情報セキュリティの分野で使われる「インジェクション攻撃」は、悪意のあるコード(プログラムを構成する命令文)をシステムに挿入して不正な動作を引き起こす手法を指します。
SQLインジェクションは、攻撃者がWebサイトやシステムのデータベースに対して、不正なSQL文を挿入して実行させることで、情報を読み取ったりデータを改ざんしたりするといった不正な動作を引き起こします。
SQLインジェクションの仕組みは?
SQLインジェクションの仕組みは次のとおりです。
Webサイトには、ログイン画面や検索ボックスのようにユーザーが情報を入力するフォームがあり、通常、入力した情報はSQL文を使ってデータベースに送られ、処理されます。攻撃者は入力フォームに特殊なSQL文を入力することで、データベースに対して意図しない操作を行わせることができます。
- 入力フォームの利用:
攻撃者は、WebサイトやWebアプリケーションの入力フォームやURLに悪意のあるコードを入力します。 - SQL文の挿入:
攻撃者は、ログイン画面や検索ボックスなどに特殊なSQL文を入力することで、データベースにコードを挿入させ、元のデータベースのSQL文を改変します。 - データベース操作:
改変されたSQL文が実行されると、攻撃者はデータベース自体を操作できるようになり、データベースに保存されたデータが不正に読み取られたり、改ざんや削除されたりします。
SQLインジェクションを防ぐには、フォーム等に入力されたデータを検証し、悪意のあるSQL文が実行されないようにする対策が必要です。
SQLインジェクション攻撃の被害例
SQLインジェクションの被害事例として、最も知られているのは情報漏洩です。企業が保有する機密情報や個人情報が流出すると、重大な情報セキュリティ事故となります。特に、クレジットカード情報が流出すると、カード番号や名義が悪用される二次被害も発生します。
また、近年増加しているのがデータの改ざんです。データベースに保存されたデータが改ざんされると、情報の真偽が判断できなくなり業務に支障が生じてしまいます。さらに、Webサイトにマルウェアを埋め込まれるなどして、閲覧者のコンピューターを感染させるという事例も増えています。
SQLインジェクションによる被害の具体例を紹介します。
10万件以上の個人情報漏洩
とあるECサイトの企業データベースがSQLインジェクション攻撃を受け、10万件以上の個人情報が流出した可能性があると発表されました。攻撃者は不正なSQL文を挿入し、データベースから情報を抽出したとされています。
Webサイトのセキュリティ対策不備
某メディアのWebサイトがSQLインジェクションによる不正アクセスを受け、ユーザーの名前やメールアドレスなどの個人情報が流出した可能性があると公表しました。Webサイトのセキュリティ対策が不十分だったことが要因で、入力されたデータを適切に検証せずにデータベースに送信してしまったことが原因だとされています。
データベースの脆弱性を悪用
あるイベント会社は、自社Webサイト用サーバーに対して、複数回にわたるSQLインジェクション攻撃があったことを発表しました。データベースの脆弱性を悪用し、攻撃者が入力フォームに悪意のあるSQL文を入力。メールマガジン会員のメールアドレスやパスワードなどの流出被害に遭ったとされています。
SQLインジェクションの対策方法
SQLインジェクション攻撃から情報漏洩やデータ改ざんを防ぐために、次のような対策が有効とされています。それぞれについて詳しく解説します。
- プレースホルダーの利用
- エスケープ処理
- 詳細なエラーメッセージを表示しない
- 更新プログラムの適用
プレースホルダーの利用
プレースホルダーとは、SQL文を組み立てる際に、ユーザーが入力した文字列(入力値)をSQL文に直接埋め込むのではなく、事前に定義した「?」や「$」といった記号(代替文字列)と入力値を置き換える方法です。こうすることで入力値は、SQL文の一部としては認識されなくなり、悪意のあるSQL文の挿入を防げます。プレースホルダーを利用することで、ユーザーの入力が安全にデータベースに送信されるようになります。
エスケープ処理
エスケープ処理とは、ユーザーが入力した特定の文字や記号をエスケープする(別の形に変換する)処理のことです。例えば、SQL文で特別な意味を持つシングルクオーテーション「'」をエスケープして「\'」に変換することで、入力値とSQL文が正しく区別できるようになります。エスケープ処理を行うことで、悪意のある攻撃者がデータベースに不正なSQL文を送るのを防ぎます。
詳細なエラーメッセージを表示しない
SQLインジェクションの対策に、詳細なエラーメッセージを表示させないことが挙げられます。データベースの種類やエラーの原因、実行エラーを起こしたSQL文などをエラーメッセージ内に表示すると、システムの内部情報が攻撃者に知られてしまいます。これらは、攻撃者に手掛かりを与えるだけでなく、実際に攻撃された結果を表示する情報源としても悪用される場合があるため、エラーメッセージに含まないことが重要です。
更新プログラムの適用
SQLインジェクションを防ぐためには、脆弱性を修正するための更新プログラムの適用が欠かせません。もし、データベースやWebサイトに脆弱性が見つかった場合でも、攻撃者に悪用される前に更新プログラムを適用することでシステムを保護できます。定期的に更新プログラムを適用し、システムを最新の状態に保つことが、SQLインジェクションを防ぐ基本的かつ効果的な方法です。
注意すべきWebサイトの特徴
SQLインジェクションは、個人情報や企業の重要なデータを扱うWebサイトにとって特に危険な攻撃です。これらのWebサイトの多くはデータベースを使って情報を管理しています。例えば、ログイン画面や検索ボックス、コメント欄など、ユーザーが入力するフォームがある場合は、特に気をつける必要があります。
ユーザーが入力フォームを通じてデータを送信する際に、悪意のあるコードが入力されると、データベースの情報が不正に操作される危険性があります。また、前述したように入力内容を置き換えるなど、特別な処理を行わなければ、不正操作の被害に遭うリスクが高まります。
まとめ
ここまで、SQLインジェクションについて、その仕組みや被害例、対策方法などについて説明してきました。SQLインジェクション攻撃の被害には、情報漏洩やWebサイトの改ざんが含まれるため、個人情報や企業の重要なデータを扱うWebサイトは、極めて高いリスクにさらされています。これらのリスクを軽減するためにも、プレースホルダーの利用やエスケープ処理、システムの定期的な更新プログラムの適用といった、SQLインジェクションを想定したセキュリティ対策を徹底し、データベースの安全性を確保することが非常に重要になります。