のみぞうのちょっと一息しませんか?あなたの知らない技術同人誌の世界


合同会社SecuLeap 代表
野溝 のみぞう 氏
デザイナー・プリセールス・エンジニア・カスタマーサクセス……数々の職を転々としたものの、とある情報漏洩事件をきっかけにサイバーセキュリティ業界に落ち着き、本を書いたりイベントを開いたりしています。CISSP、情報処理安全確保支援士(第027975号)、ネットワークスペシャリスト。
皆さん本は好きですか? お仕事柄、技術書をよく読む方も多いのではないかと思いますが、本屋さんで見かける技術書とはちょっと違う、もう一つの技術書の世界があるってご存じでしょうか? それが「技術同人誌」です。
そもそも同人誌って?
同人誌って聞くと、マンガやアニメの二次創作を思い浮かべる方も多いかもしれません。でも実はもっと幅広いんです。「同人」というのは「同じ趣味を持つ仲間」という意味で、内容問わず出版社を通さずに個人的に作る本全般を同人誌といいます。1人で書いている本もあれば何人もの著者がオムニバス形式で書いている本もあります。厚さは数十ページから百ページくらいの、普通の本に比べると薄い本が多いです。
技術同人誌の良さ
技術同人誌のなにがいいかって、とにかく自由なところです。商業出版だと、出版社が絡むのでニーズが見込めなさそうな本はそもそも世に出すことができません。また、ページ数や値段などいろいろと制約があります。でも同人誌なら、著者が本当に書きたい超ニッチなテーマを、好きなだけ深掘りできるのが楽しいところです。例えば「あらゆる言語の特定のデータ型のことだけがひたすら書いてある60ページ」みたいな、刺さる人にしか刺さらない本も実際にあります。こういう超マニアックな本が、ほかの誰かにとっては宝物になったりするんですよね。
書く理由も人それぞれで面白いです。「仕事で学んだことを外の人にも共有したい」「勉強したことを文章にすると理解が深まるから」「同じ技術が好きな仲間に出会いたい」など。「誰かの役に立ちたい」「自分の学びを形にしたい」という純粋な気持ちで書いている人が多い気がします。

技術書を頒布する即売会
同人誌を売ることは「販売」ではなく「頒布」と表現します(営利目的ではないので……ということらしいです)。即売会などのタイミングで著者自身によって頒布されることが多いです。特にコミックマーケットや技術書典などの即売会が有名で、最近だとオンラインストアのような仕組みもあります。

例えば、技術書典は技術書を中心としたさまざまな本を頒布する同人誌即売会で、年に数回東京で開催されています。会場に入ると、プログラミング言語やフレームワーク、クラウド、AI、ロボット、数学、化学、マネジメント……果ては手芸やお料理など、ありとあらゆる「技術」に関する本がずらりと机に並びます。もちろんセキュリティもあります。ブースを回りながら気になる本を手に取って中身を確認できるのも即売会の楽しいところです。
同人誌を通じてつながる技術者

即売会に行くと、著者と読者が直接話している光景がたくさん見られます。「この本のここ、仕事でめっちゃ困ってたんです!」って読者に言われて、著者さんの顔がパーッと明るくなる瞬間とか、見ているこっちまでうれしくなります。商業出版だと著者と読者の間に編集者や書店が入りますが、即売会だと直接つながることができます。この距離感の近さが、コミュニティを盛り上げているんだと思います。
ブースで著者さんと技術談義が始まることもよくあります。「実はこの実装、こういう理由でこうしたんです」みたいな裏話を聞けたり、「じゃあこのケースはどうするんですか?」って突っ込んだ質問をしたり。そういう会話の中から、新しいアイデアが生まれたり、思わぬ解決策が見つかったりすることもあります。
技術同人誌の世界って、商業出版とは違う価値観が浸透しているんです。「何部売れたか」ではなく、「楽しいことはなに?」「推しているポイントはなに?」「知ってほしいことはなに?」のような、素朴に好きなことを表現したいって気持ちに支えられているんだと思います。きっと、今まで知らなかった技術の世界が広がっていますよ。
(「SKYSEA Client View NEWS vol.106」 2026年1月掲載)