
組織の通信ネットワークを適切な状態に保つ上で、ネットワーク監視は非常に重要です。ネットワーク監視は、通信遅延などのネットワークトラブルの把握だけでなく、サイバー攻撃によるサーバーダウンなどのセキュリティインシデントの早期発見にも役立ちます。この記事では、ネットワーク監視について押さえておきたい基本事項をはじめ、ネットワーク監視ツールを選定する際に重視したいポイントについて解説します。
ネットワーク監視とは、ネットワークが正常に稼働しているか監視すること
ネットワーク監視とは、ネットワークが正常に機能しているかどうか監視することを指します。具体的には、通信品質が低下していないか、障害が発生していないか、障害の予兆が見られないかといった点を継続的にチェックしていく作業です。
ネットワークは常に稼働し続けていることが前提なので、ネットワーク監視についても24時間365日体制で実施する必要があります。何らかの問題が発生した際にネットワーク管理者にいち早く通知される仕組みを構築することが大切です。
ネットワーク監視が重視される背景
現代社会において、ネットワークは「常に問題なくつながるのが当たり前」と認識されているといえるでしょう。通信できない時間帯があったり、通信が遅い・不安定と感じたりするとユーザーにとって大きなストレスとなるだけでなく、業務が滞ることにもなりかねません。5G通信が普及しつつある現代においては、わずかな接続不良や回線遅延が発生するだけでもその損害が大きく報じられ、早期復旧が求められます。ネットワークを安定的に運用していく上で、ネットワーク監視の重要性が増しているのが実情です。
ネットワーク監視の対象
ネットワーク監視と一口にいっても、監視すべき対象は多岐にわたります。ネットワーク監視の主な対象は次のとおりです。
サーバー性能監視
サーバー性能監視とは、ネットワーク上のサーバーについて、パフォーマンスや利用状況を監視することです。具体的には、下記の要素を重点的に監視します。
サーバー性能監視の対象となる主な要素
- OS:CPU使用率、メモリ使用率、ネットワーク利用状況
- データベース:サーバーの応答時間やエラー情報、データベース使用率、トランザクション数
- アプリケーション:サーバーの応答時間やエラー情報、セッション情報、応答までの時間
ハードウェア動作監視
ハードウェア動作監視とは、ハードウェアの動作状況や故障有無などを把握し、正常に動作しているかどうかを確認することです。なお、ネットワークにおけるハードウェアとは、サーバーやハードディスクといった機器そのものを指します。
ネットワーク上の周辺機器監視
ネットワーク上の周辺機器監視とは、ネットワーク上に接続されているルーターやスイッチなど、複数の周辺機器に異常が発生していないか監視することです。具体的な監視のポイントは、下記となります。
周辺機器監視の主なポイント
- ネットワーク障害(ループなど)が発生していないか
- ルーターやスイッチなどの機器の動作環境は正常か
- 通信プロトコルの応答時間は遅延していないか
- 機器そのものが正常に稼働しているか
このように、ネットワーク監視は特定の箇所を集中的に監視するというよりは、ネットワークに関わりのあるさまざまなポイントをチェックした上で、異常が発生していないかどうかを総合的に判断する点が大きな特徴です。必然的に監視する対象が幅広くなることから、システム管理者などが目視で確認するのではなく、ネットワーク監視ツールを活用して異常を検知する方法が一般的になっています。
ネットワーク監視における確認項目
ネットワーク監視では、監視対象がどのような状況にあるかを確認する必要があります。状況の確認は、次の4種類の項目について行うのが一般的です。
死活監視
死活監視とは、サーバーやネットワーク機器が正常に動いているか、停止していないかを監視することを指します。主な監視方法は「Ping(ピンまたはピング)による確認」と「ポート監視」の2種類です。
死活監視の主な方法
- Pingによる確認:Pingコマンドへの応答速度を測り、正常な応答速度であるかを確認する方法
- ポート監視:サーバーの扉に当たるポートにアクセスし、異常が発生していないかを確認する方法
サーバーやネットワーク機器は、通常利用を続けていても一時的に負荷がかかったり、外部からの攻撃などによって不具合が生じたりする可能性は十分にあります。不具合やその兆候を早期に発見するために、死活監視を実施することが大切です。
遅延監視
遅延監視とは、ネットワークに遅延が発生していないか、発生している場合はどの程度の遅延かを監視することにより、ネットワークの正常性を確認することを指します。アクセスした際の応答時間をグラフィカルに表示したり、レスポンス速度の低下度合いが正常範囲内にあることを確認したりする方法が一般的です。遅延監視を常時実施していくことは、ネットワークに遅延が発生する原因を調査する意味でも役立ちます。
経路監視
経路監視とは、回線の混雑状況を監視することを指します。ネットワークが正常な状態であっても、一時的に通信量が増えて回線が混雑し、レスポンスが低下するケースは少なくありません。このため、サーバーおよび周辺機器の回線状況を常時監視することが必要です。経路監視の実施は、通信速度が著しく低下した際にも迅速な原因究明に役立ちます。
状態監視
状態監視とは、ネットワーク内の機器に搭載されているCPU使用率やメモリ使用率、ハードディスク利用率などを監視することを指します。状態監視では、メモリ使用率が著しく増加している、大量のパケットを送信しているといった異常を検知できるため、パフォーマンスが低下している機器の把握やマルウェアなどのサイバー攻撃の被害にあっている可能性のある機器の検出に役立ちます。
ネットワーク監視を行うメリット
ネットワーク監視はネットワークの安定的な運用に必須といえますが、ビジネスの上でもさまざまなメリットをもたらします。ここでは、ネットワーク監視を実施することで得られる主なメリットについて解説します。
ビジネス上の損失を回避・抑制できる
ネットワーク監視のメリットの一つは、ビジネス上の損失を回避・抑制できることです。ネットワークに障害が発生して一時的に利用できなくなった場合、業務を遂行できない空白の時間が発生したり、顧客や取引先からの注文や問い合わせに対応できなかったりする状態に陥りかねません。ネットワーク障害の発生を未然に防止したり、障害発生時に復旧を早めたりすることで、こうした社内業務の停滞や機会損失を回避できます。
ネットワーク管理者の工数を削減できる
ネットワーク監視には、異常の前兆を検知したり、障害が深刻化していない段階で対応したりすることにより、ネットワーク管理者の工数を削減できるというメリットがあります。たとえ1台であっても、ネットワーク上の機器の処理遅延を放置すれば、同じネットワーク上のほかの機器に負荷がかかり過ぎたり、ネットワーク全体が停止したりする可能性があります。異常の兆候に気づいた段階で早めに対処することにより、メンテナンスや復旧作業に要する工数を大幅に削減できます。
シャドーITの把握と監視ができる
従業員が組織の許可なく私物のデバイスを業務利用したり、フリーのソフトウェアなどをインストールしたりすることをシャドーITといいます。このシャドーITの把握と監視が可能になる点も、ネットワーク監視の大きなメリットです。組織が把握していないシャドーITは脆弱性の原因になりやすく、組織にとって大きなリスクとなりかねません。ネットワーク監視を通じて通信の種類や量を随時把握することにより、シャドーITの存在を検知できる可能性が高まります。
障害期間の短縮・障害発生を予防できる
ネットワークに障害が発生した際に、障害期間を短縮したり、同様の原因で障害が発生するのを予防できたりすることもネットワーク監視を実施するメリットの一つです。ネットワーク障害は、どれほど注意深く監視していても発生する可能性をゼロにはできません。一方で、ネットワーク監視を常時適切に実施しておくことで問題が発生しやすい箇所を予測できるため、障害の原因究明と再発防止策を講じやすくなるというメリットがあります。
不要なリソースを抑制できる
ネットワーク監視を適切に実施していくことにより、自社のリソース使用状況や正常な通信量の範囲などを把握しやすくなります。結果として必要以上のリソースを抑制し、コストの増大を防げる点が大きなメリットです。過大な投資による利益の圧迫を未然に防止できます。
提供サービスの安定化を実現できる
ネットワークを安定的に運用・保守できるようになれば、サービスやシステムを障害によってダウンさせることなく提供できます。どのような理由であっても、サービスが利用できない状況が生じればユーザーに不信感を抱かせてしまいかねません。提供サービスの安定化を実現することは、企業ブランドの維持や顧客満足度の向上という観点において重要なポイントといえます。
ネットワーク監視ツールを検討する際のポイント
ネットワーク監視は24時間365日体制で実施する必要があることに加え、監視すべき対象が多岐にわたることから、監視ツールを活用するのが一般的です。さまざまなネットワーク監視ツールの中から、自社に合ったものを選定する際のポイントをご紹介します。
自社の目的やネットワーク環境に合うツールか
自社が監視する必要のある対象に適しているか、ネットワーク環境に対応したツールであるかを把握しておく必要があります。ネットワーク監視ツールによって対応可能な機器やネットワーク環境は異なるため、自社の用途に適したツールかどうかを十分に確認することが大切です。
テンプレートでカスタマイズできるか
監視項目などのメニューが、あらかじめテンプレートとして用意されているかどうかを確認しておくことをお勧めします。テンプレートによるカスタマイズに対応していれば、初期設定や運用にかかる工数を削減できる可能性が高いからです。ネットワーク監視に関する専門知識を持つ人材が社内にいない場合には、特に重視しておきたいポイントといえます。
監視アラートの通知は気づきやすいか
異常を検知した際のアラートがどのような手段で通知されるのか、事前に確認しておく必要があります。ネットワーク監視にはスピード感が求められるため、異常を検知した時点で初動対応に移行できないようでは、ツールを導入する意味が薄れてしまいかねません。監視アラートの通知方法はメールやビジネスチャットが一般的ですが、運用者が気づきやすい方法で発出されるツールを選ぶことをお勧めします。
サポート体制やセキュリティは高品質か
ツールの使い方に関する不明点が出てきた場合や、不具合が発生した場合のサポート体制を十分に確認しておくことが大切です。また、ネットワーク監視ツールそのものがサイバー攻撃の標的となる事態も起こり得ます。セキュリティ品質が高く、十分な対策が講じられているかどうかも確認しておくのが得策です。
自社で設定した予算に合っているか
ツールの導入費用が、自社が設定した予算の範囲内に収まっているかどうかも確認しておきたいポイントの一つです。導入時の初期費用だけでなく、メンテナンスなどにかかる運用コストも含めて試算しておく必要があります。ツールによっては、監視対象とする機器の台数などによってプラン設定が異なるケースがあるため、見積もりを依頼した上で比較検討することが大切です。
ツールの専門性が高過ぎないか
ネットワーク監視ツールを扱うにはある程度の知識が求められるとはいえ、あまりにも専門性が高過ぎるツールを選んでしまうと扱いにくい可能性があります。ツールとしての扱いやすさや求められる専門性の度合いを慎重に検討し、自社に合ったツールを選ぶのがポイントです。
監視結果のレポートは見やすいか
監視結果のレポートが見やすいか、自社が必要とする監視結果にカスタマイズできるかといった点も必ずチェックしておく必要があります。レポートの可読性が低かったり、専門知識がなければ読み解けないような記載方法になっていたりすると、レポートを生かせない可能性があるからです。ひと目でわかる見やすいレポートを出力できるツールを選ぶことをお勧めします。
適切なネットワーク監視環境の早期構築が大切
ネットワーク監視は、社内ネットワークを管理・運用している以上欠かせない対策といえます。企業規模にかかわらず、ネットワークの障害が深刻なものだったり、長期化したりすれば事業に多大な影響が及ぶのは避けられません。今回紹介したポイントを参考に、適切なネットワーク監視の環境を早期に構築することが大切です。
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