どのようなOSやソフトウェアも、使い続けていく中で脆弱性や問題点が生じる可能性があります。セキュリティパッチとは、こうした脆弱性や問題点を修正するための更新プログラムのことです。この記事では、セキュリティパッチを適用すべき理由や管理するメリット、運用管理の注意点についてわかりやすく解説します。
セキュリティパッチとは、OSやソフトウェアの脆弱性や問題点を修正するプログラムのこと
セキュリティパッチとは、OSやソフトウェアに脆弱性が発見された際、開発元がユーザーに対して無償提供する更新プログラムのことです。ほかにも、修正プログラムやアップデートプログラムなどいくつかの呼び方があり、Microsoftが毎月公開しているWindows Updateもこれにあたります。
提供されたセキュリティパッチを適用することにより、OSやソフトウェアに脅威が侵入しにくい状態にすることが可能です。サイバー攻撃の被害から組織を守り、情報漏洩対策を講じていく上で、セキュリティパッチの適用は必須の対策といえます。
セキュリティパッチを適用すべき理由
セキュリティパッチを適用しない場合、OSやソフトウェアの脆弱性が改善されず放置されることにもなりかねません。サイバー攻撃では、こうした脆弱性を狙ってマルウェアなどの悪意あるプログラムを侵入させる手口も多く見られます。セキュリティパッチの適用が必要とされる主な理由は、下記の3点です。
脆弱性の修正
セキュリティパッチを適用することで、脆弱性といわれるセキュリティの欠陥のうち、発見済みのものが修正されます。攻撃者の視点に立った場合、容易に侵入できそうな「抜け道」がふさがれることは、サイバー攻撃が困難になることと同じです。脆弱性を速やかに修正することは、サイバー攻撃の脅威にさらされるリスクを低減し、システムの安全性を向上させることを意味します。
セキュリティ対策の強化
セキュリティ対策の強化を図るためにも、セキュリティパッチを随時適用することが必要です。OSやソフトウェアの開発元から提供されるセキュリティパッチには、最新のセキュリティ機能や防御策を取り入れるために必要なプログラムが含まれています。セキュリティ対策に役立つ最新機能が常に有効な状態にするには、提供されたセキュリティパッチの速やかな適用が重要です。
システムの安定性とパフォーマンスの向上
セキュリティパッチには、OSやソフトウェアのバグ修正や機能向上のためのプログラムが含まれている場合もあります。こうしたプログラムを速やかに適用することにより、システムの安定性やパフォーマンスがより向上することが期待できます。システムを快適に利用し続けていくためにも、セキュリティパッチの速やかな適用が必須です。
セキュリティパッチの適用の流れ
セキュリティパッチの適用は、流れを決めて計画的に実施するとスムーズです。ここでは、セキュリティパッチを適用する際の基本的な流れをご紹介します。
1. 脆弱性の情報を集める
初めに、システムやソフトウェアの脆弱性に関する情報を収集します。脆弱性対策情報ポータルサイトの「Japan Vulnerability Notes(JVN)」が公開している「脆弱性対策情報データベース」や、ソフトウェアベンダーが提供している脆弱性診断サービスなどを活用するのも一つの方法です。新たな脆弱性情報が公開されていたり、自社で採用しているシステムやソフトウェアに脆弱性が見つかったりした場合には、対応の要否を検討します。
最新のセキュリティパッチが新たに提供されているようなら、リリースノートなどをチェックして、更新プログラムの内容や適用した場合の影響を確認します。セキュリティパッチを適用すると変更される点がある場合には、自社の業務に差し支える可能性がないか十分に検討しておくことが大切です。
2. セキュリティパッチの入手とテストを行う
脆弱性への対応が必要と認められる場合には、システムやソフトウェアの開発元が提供するセキュリティパッチを入手します。入手したら、実務で使用する端末に直接セキュリティパッチを適用するのではなく、検証用のPCでテストを行うことが大切です。業務で使用しているものと同じ条件の検証用PCで、セキュリティパッチを適用した際に不具合が生じないかを確認すれば、業務に影響を与えずに済みます。
3. スケジュールを調整する
組織内のPCにセキュリティパッチを一斉に適用するとなると、ネットワーク帯域に相応の負荷がかかるほか、適用に時間がかかることが想定されます。できるだけ業務に支障をきたさない時間帯にアップデートを実行できるよう、スケジュールを調整しておくことが大切です。
4. セキュリティパッチ適用後の状態を確認する
セキュリティパッチを適用したら、すべての端末に最新バージョンが問題なく反映されているかを確認します。また、業務に使用するアプリケーションの動作などに問題が生じていないか、注視していくことも大切なポイントです。セキュリティパッチの適用によって何らかの問題が生じた場合には、開発元に問い合わせて対応方法を確認する必要があります。
セキュリティパッチを定期的に管理するメリット
最新のセキュリティパッチを常に適用できるよう管理することで、どのようなメリットを得られるのでしょうか。主なメリットとして挙げられるのは、下記の3点です。
脆弱性の早期解消につながる
最新のセキュリティパッチを定期的に管理することは、脆弱性の早期解消につながるメリットがあります。脆弱性は次々と発見されるため、セキュリティパッチも頻繁に更新されます。最新のセキュリティパッチを適用していない状態は、脆弱性を放置し、攻撃者が侵入可能な入口を開放していることと同じです。サイバー攻撃の被害に遭うリスクを低減するためには、セキュリティパッチの適用状況を適切に把握し、管理していくことが重要です。
業務効率化や生産性向上につながる
セキュリティパッチを定期的に管理することにより、業務効率化や生産性向上につながるというメリットもあります。OSやソフトウェアの不具合解消や機能改善につながるプログラムが随時適用されることで、OSやソフトウェアの利便性が向上し、従業員がよりストレスなく業務を行える可能性が高まるからです。
組織内のセキュリティの強度を統一できる
セキュリティパッチの管理を組織的に行うことにより、すべての端末のセキュリティ強度を統一できる点もメリットといえます。全端末にセキュリティパッチを一斉に適用すれば、更新漏れを回避しやすくなるからです。セキュリティ対策を講じる上で、セキュリティ強度の統一化は重要なポイントの一つです。組織内に脆弱性が残されている端末が1台でもあれば脅威の侵入経路となり得るため、組織単位でセキュリティパッチの管理をしていく必要があります。
セキュリティパッチを運用管理する注意点
セキュリティパッチの運用管理に際して、いくつか注意しておきたい点があります。セキュリティパッチを適切に運用していくためにも、下記の5点を着実に実践していくことが大切です。
セキュリティパッチの公開情報を定期的に確認する
セキュリティパッチを素早く適用するためには、公開情報を定期的に確認することが大切です。OSやソフトウェアのセキュリティパッチは、脆弱性が発見され次第開発が進められ、順次公開されていきます。脆弱性が放置された状態にしないためにも、セキュリティパッチの公開情報を随時チェックしていくことが欠かせません。
信頼性の高い情報を参考にする
新たに発見された脆弱性や、対応するセキュリティパッチに関する情報を確認する際には、信頼性の高い情報源を参照することが大切です。例えば、OSやソフトウェアの開発元の公式Webサイトのほか、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)や前述したJapan Vulnerability Notes(JVN)といった、公的な立場で脆弱性情報を公開している機関のWebサイトを参考にすることをお勧めします。
動作確認は検証用PCで行う
セキュリティパッチを適用した際の動作確認は、実務で使用しない検証用PCで行うことが大切です。検証を行わないまま実務で使用するPCにセキュリティパッチを適用し、動作が不安定になったり、機能に変更が加えられたりした場合、業務に支障が出る可能性があります。こうした検証をスムーズに実施するためにも、業務で使用しているPCと同じ環境の予備PCを検証用として確保しておくのがお勧めです。
セキュリティパッチは業務利用のPCすべてに、速やかに適用する
セキュリティパッチは適用漏れのないよう、業務で利用するすべてのPCに速やかに適用する必要があります。組織内に1台でも適用漏れがあれば、脅威の侵入源となり得るからです。また、会社から従業員に貸与しているPCだけでなく、従業員が私物のPCを無断でネットワークに接続している場合にも注意しなければなりません。もし、セキュリティパッチが適用されていないPCが組織内ネットワークに接続されれば、攻撃者にとって格好の侵入経路になります。
情報システム部門が一括して運用作業を行う
セキュリティパッチの運用作業は、情報システム部門が一括して担うのが基本です。従業員の各人に更新作業を委ねた結果、業務が多忙のため更新作業を後回しにする人がいることが想定されます。クライアント運用管理ソフトウェアなどを活用し、組織の管理下にある端末にセキュリティパッチを一括適用する方法がお勧めです。
セキュリティパッチでは防げないサイバー攻撃もある
セキュリティパッチの適用は、サイバー攻撃の脅威を防ぐための有効な対処法といえます。しかし、セキュリティパッチを適用したからといって、全てのサイバー攻撃を防げるわけではありません。セキュリティパッチによる防御をかいくぐる手口の例として「ゼロデイ攻撃」が挙げられます。ゼロデイ攻撃とは、脆弱性が発見されてからセキュリティパッチが提供されるまでにタイムラグが生じることを利用し、そのわずかな期間に攻撃を仕掛ける手口です。
こうした脅威が存在することを踏まえると、脅威が侵入した場合に被害を最小限に食い止めるための対策も欠かせません。端末ごとのセキュリティ強度を高める「エンドポイントセキュリティ」の考え方を取り入れていく必要があります。具体的には、エンドポイントを総合的に管理するツールを導入するのが得策です。
セキュリティパッチの適用は企業規模にかかわらず必須の対策
セキュリティパッチの適切な運用は、企業規模にかかわらず業務の遂行のために必須の対策です。セキュリティパッチは、組織内の全端末に適用されるからこそ効果を発揮します。従って、最新のセキュリティパッチを速やかに適用するとともに、未適用の端末が残されない体制を整備していく必要があります。
クライアント運用管理ソフトウェア「SKYSEA Client View」は、IT資産を管理するための機能を搭載したセキュリティツールです。「SKYSEA Client View」の管理下にあるPCの中のソフトウェアも管理でき、セキュリティパッチの適用・アップデートは複数のPCへ一斉に行えます。また、緊急性の高いセキュリティパッチは優先的に強制配布することもできます。
セキュリティパッチの管理に不安を抱いている事業者様は、ぜひ「SKYSEA Client View」の導入をご検討ください。
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