情報セキュリティポリシーとは? 策定の目的や必要性、3つの構成について紹介
組織・企業に対するサイバー攻撃が激化するなかで、適切な情報セキュリティ対策を実施していくためには、対策の根幹となる情報セキュリティポリシーの存在が欠かせません。情報セキュリティポリシーを策定し、方針やルールなどを明確にすることで、組織全体が同じ方向性で対策を実施できます。この記事では、情報セキュリティポリシーを行う目的や重要性、基本となる3つの構成要素や、実際に策定する際のポイント・注意点などをご紹介します。
情報セキュリティポリシーとは
情報セキュリティポリシーとは、企業や組織が情報セキュリティを一定に保つために定めた、全体的な方針や行動指針のことです。情報セキュリティポリシーでは主に、①情報セキュリティに関する組織全体でのルールや運用規定、②保護対象となる情報資産、③想定されるリスクから情報資産を守る方法および方針、④情報セキュリティを確保するための組織内の体制などについて記載されます。
組織における情報セキュリティ対策は、規模や体制によって内容が大きく異なるため、自社に合った情報セキュリティポリシーを策定する必要があります。また、自社のセキュリティ担当者のみが対策を心掛けるだけでは意味がありません。情報セキュリティポリシーを通じてすべての従業員がセキュリティ意識を向上させ、対策に取り組むことが重要です。
情報セキュリティポリシー策定の目的や必要性とは?
情報セキュリティポリシーを策定する目的は、企業の情報資産を守ることです。特にインターネットを活用して事業を行う企業では、顧客情報などの情報資産を守るために策定が必要となります。
サイバー攻撃などのリスクから企業の情報資産を守る
組織の情報資産を守るためには、サイバー攻撃などの外部からの脅威や、従業員のミスによる情報漏洩、意図した情報持ち出しなどの内部リスクに対応する必要があります。情報セキュリティポリシーを策定することが、これら組織内外の脅威への対策を強化することにつながり、さらに事業の安定・継続を図ることができます。
情報漏洩を防ぎ企業の信頼性を高める
組織の機密情報や個人情報が流出・漏洩してしまうと、企業の信頼は失墜し、事業継続が困難になる可能性もあります。適切な情報セキュリティポリシーを策定し運用することで、賠償や訴訟といった問題へ発展していくのを未然に防ぎ、顧客や取引先などからの信頼を保つことができます。
トラブル発生時の迅速な対応を可能にする
事前の対策が不十分だと、いざ情報流出などのトラブルが発生しても迅速に対応できない可能性があります。情報セキュリティポリシーを策定し、組織内で取り組みが十分に浸透していれば、災害や緊急時にも慌てずに適切な措置を実施できるため、組織としての危機管理能力が向上します。
従業員のセキュリティ意識の向上
情報セキュリティポリシーを策定することで、情報セキュリティに関する判断基準や実際に講じるべき対策が具体的になります。そして、セキュリティポリシ-の内容を従業員に周知したり、研修などを実施することで、各従業員のセキュリティ意識を高められることも大きなメリットです。
情報セキュリティの3要素とは
情報セキュリティの対策を検討する上で重要なポイントは、「機密性(Confidentiality)」「完全性(Integrity)」「可用性(Availability)」の3つの要素を考慮することです。これら要素はそれぞれの頭文字をとって「CIA」と呼ばれ、組織の情報セキュリティを確保するために不可欠なものとして機能します。
機密性(Confidentiality)
「機密性」とは、許可されたユーザーのみに情報へのアクセスを許可することで、組織・企業内で取り扱う情報を外部に漏らさないようにすることを指します。機密性を高めるためには、重要データが保存されているフォルダへのアクセスを制限したり、社内の重要な情報を扱う端末を社外に持ち出させないなどの対策が効果的です。
完全性(Integrity)
「完全性」とは、情報が改ざんされず、正確な状態で保護されていることを指します。データの完全性を維持することで、間違った情報に基づいた決定が行われることを避け、企業の信頼性を保つことができます。具体的な対策としては、データの更新手順や保管ルールなどを明確に規定したり、データにデジタル署名をつけるなどが挙げられます。
可用性(Availability)
「可用性」とは、機密性や完全性が確保された状態で、必要なときに情報やリソースがいつでも利用できることを指します。システムの冗長化やクラウド化が整った可用性が高い環境では、仮にトラブルなどでデータにアクセスできない状態になったとしても、素早い復旧により被害を最小化し、組織の生産性を維持することができます。
情報セキュリティポリシーの構成
実際の情報セキュリティポリシーには、どのような内容が記載されているのでしょうか。セキュリティポリシーの構成は、大きく「基本方針」「対策基準」「実施手順」の3つに分かれていることが一般的です。それぞれの構成についてご紹介します。
基本方針|情報セキュリティポリシーの指針
「基本方針」には、後に続く対策基準や実施手順を考える上での基本的な指針・宣言が示されます。組織として情報セキュリティポリシーが必要な理由、適用する範囲や対象者に加えて、ポリシーに違反した場合の対応などについても明示されることがあります。基本方針は企業のWebサイトに掲載されることもあるため、企業の信頼性を図る上で重要な役割を担います。
対策基準|情報セキュリティポリシーのガイドライン
「対策基準」では、基本方針に沿って組織内の情報資産を守るために、実際にどのような対策を実施するのかについてガイドラインを掲載します。例えば「セキュリティ対策ソフトウェアの導入」「従業員のセキュリティリテラシーの向上」といったそれぞれの取り組みについて、対策方法や基準などを明示します。何がどの程度まで許容されるのか明確な基準を設けて記載することが重要です。
IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン改定版」のポイント
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公開している「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」では、情報セキュリティ対策に取り組む際に、経営者が認識し実施すべき指針や、組織内において対策を実践する際の手順・手法がまとめられています。ガイドラインは「経営者編」と「実践編」で構成されています。
特に、2023年4月に公開されたガイドライン改定版では、働き方の変化を受け、テレワーク実施時のセキュリティ対策の重要性が記載され、テレワークを安全に実施するためのポイントが追加されています。また、セキュリティインシデントが発生した際の具体的な方策も追記され、付録として「中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き」も加えられています。
実施手順|情報セキュリティポリシーの実施方法
「実施手順」では、対策基準で示した各種取り組みについて、具体的にどのような手順で実施していくかを記載します。取り組みを進めるためのマニュアルと考えてよいでしょう。例えば、従業員のセキュリティリテラシー教育について実施手順を記載する場合には、研修などを実施する頻度や回数、採用する教材・学習形態、効果を測定する方法など、具体的かつ実現性が高い手順を盛り込む必要があります。
情報セキュリティポリシー策定のポイント
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)では、情報セキュリティポリシーを決めていくためのステップとして、以下の8点を挙げています。実際にポリシーを策定する手順は組織によって異なると思われますが、初めて策定する際の参考に活用するとよいでしょう。
- 組織・体制の確立
- 基本方針の策定
- 情報資産の洗い出しと分類
- リスク分析
- 管理策の選定
- 対策基準の策定
- 対策基準の明文化と周知徹底
- 実施手順の策定
情報セキュリティポリシーは、ITに関する知識や経験値も異なるさまざまな従業員が利用することになります。内容が理解できなければ、実施すべき取り組みもわからず、せっかく作成したポリシーも形骸化してしまう可能性があります。そのため、可能なかぎり平易な表現を使って作成するように心掛けることが大切です。IPAでは基本方針のサンプル文などもWebサイトにて掲載していますので、作成時の参考にしてみてはいかがでしょうか。
情報セキュリティポリシー運用の注意点
情報セキュリティポリシーを策定する際には、上記でご紹介した以外にも注意すべきポイントがいくつかあります。まず、情報セキュリティポリシーによって守るべき対象の情報資産や、対象者の範囲を明らかにすることです。また、組織内の現状を踏まえて実現可能な内容にすることや、運用・維持体制を配慮しながら作成すること、本来の意義を失わないように違反時の罰則を明記することなどを踏まえて、ポリシ-の策定にあたることが重要です。
企業の情報資産を守るなら|SKYSEA Client View
サイバー攻撃が巧妙化し、被害が拡大している現在、情報セキュリティポリシーに沿った適切な情報セキュリティ対策を実施するためには、ITツールの導入が欠かせません。クライアント運用対策ソフトウェア「SKYSEA Client View」は、組織が定めたポリシーに反するPC操作や情報漏洩リスクを伴う操作が行われた場合に、管理者やユーザーに注意喚起したり、その操作自体を禁止できます。また、組織内のIT機器情報を集約して管理できるIT資産管理機能や、PCの挙動を記録しチェックできるログ管理機能なども用意し、大切な情報資産をリスクから守ります。