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Sky株式会社

公開日2024.12.12

キッティングとは? 必要な作業項目や実施時の注意点を解説

著者:Sky株式会社

キッティングとは? 必要な作業項目や実施時の注意点を解説

従業員が新たに入社する際やデバイスの不調による入れ替えなど、業務用のデバイスを利用可能な状態にして引き渡す必要があります。デバイスを設定して引き渡すまでの一連の作業はキッティングと呼ばれ、情報システム部門にとって重要な職務の一つです。この記事では、キッティングに必要な作業項目や実施時の注意点のほか、作業方法ごとのメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。

キッティングとは、デバイスに各種設定やソフトウェアのインストールなどを行う作業全般

キッティングとは、業務に使用するデバイスの各種設定やソフトウェアのインストールなどの作業を実施し、ユーザーである従業員が業務に利用できる状態にすることです。デバイスの設定に関連する用語には、キッティング以外にセットアップがあります。セットアップとはハードウェアやソフトウェアを使用するために必要な環境設定、インストール、登録作業などのことです。一方、キッティングはこうした一連の作業を通じて、「ユーザーがすぐに業務利用できる状態にすること」を表しています。

キッティングの基本的な流れ

キッティングは、ハードウェア・ソフトウェアの各種設定や台帳管理など、複数の作業工程から構成されています。キッティングの基本的な流れは、下記のとおりです。

1. 開梱、通電確認

開梱とは、デバイスを箱から取り出すことを指します。デバイスには初期不良などのトラブルが生じる可能性があることから、開梱時にはまず次の点を確認します。シンプルな作業ではあるものの、デバイスの台数が多い場合には相応の労力を要します。

・デバイス本体にキズや欠陥がないこと
・周辺機器や付属品がそろっていること
・デバイスの電源がONになること
・電源ケーブルを接続したときにデバイスに電力が供給されること

2. 周辺機器の接続

デバイスに、キーボードやマウスといった周辺機器を接続します。周辺機器をデバイスが認識しているか、正常に動作するかといった点を確認する作業です。

3. BIOSのセットアップ

BIOS(Basic Input/Output System:バイオス)は、PCの基本的なシステムを制御するプログラムのことです。BIOSセットアップとは、デバイスで使用するパスワードのほか、起動や接続方法などを設定することを指します。BIOSセットアップは、キッティングの際に一度実施しておけば、ユーザーが設定し直す必要はありません。

4. OSのインストールと初期設定

デバイスにOSがプリインストールされていない場合には、OSのインストールと初期設定を行います。基本的には指示に従って操作するだけですが、インストールが完了するまでの待ち時間を見込んでおくことが必要です。

5. ネットワークの設定

社内ネットワークに接続するための設定を行います。新たなデバイスを社内ネットワークに接続する際、接続申請が必要な場合には、事前に申請を完了させておくことが大切です。

6. 業務アプリケーションのインストールとライセンス認証

業務に必要なアプリケーション一式をインストールし、ライセンス認証を行います。近年は、インターネット経由でダウンロードできるアプリケーションが増えているものの、必要なアプリケーション数によってはダウンロードに多くの時間が必要です。外付けハードディスクやUSBメモリなどにインストーラーをダウンロードしておくと、作業をスムーズに進めることができます。

7. アップデートや更新プログラムの適用

OSやソフトウェアは、インストールしたものが最新バージョンとは限りません。アップデートの要否を確認した上で更新プログラムを適用するなど、必要なアップデートを行います。OSやソフトウェアを最新バージョンにしておくことは、セキュリティレベルを維持する上で重要なポイントです。

8. 各種ドライバー・ツールの設定

業務に必要な各種ドライバーやツールを設定します。例えば、デバイスをプリンターに接続するには、専用ドライバーのインストールや設定作業が必要です。周辺機器やツールが問題なく利用できることを確認するための動作テストなども実施します。

9. セキュリティ設定

セキュリティソフトウェアのインストールやファイアウォールの設定、ハードディスク / SSDの暗号化設定といった、各種セキュリティ設定を行います。セキュリティソフトウェアがインストールされていても、正しく設定されていなければ脅威を適切に検知できません。既存の端末と同様、セキュリティソフトウェアが間違いなく設定されていることを確認しておく必要があります。

10. ドメイン参加・動作確認

サーバーのドメインにデバイスを追加し、動作確認を実施します。正常に動作するかを漏れなくチェックするためにも、事前にチェックリストなどを準備しておくことが大切です。

11. 管理ラベルの貼付と台帳への記帳

デバイスに管理シールを貼り、IT資産の管理台帳へ記帳します。資産番号や資産名、資産区分、購入日といった情報が、管理ラベルと台帳で一致していなければなりません。あらかじめ管理番号の統一ルールを決めておき、ルールにのっとって発番することが大切です。

キッティングを始める前の確認ポイント

続いては、キッティングを始める前に、あらかじめ確認・認識しておきたいポイントをご紹介します。キッティングが始まってから想定外の事態に見舞われるのを防ぐために、事前確認が必要なのは下記の5点です。

キッティングにかかる工数とスケジュール

従業員が入社する場合などにキッティングが間に合わない事態にならないよう、工数を見積もってスケジュールを立てる必要があります。キッティングするPCの台数が多い場合、一台ずつ作業を進めるとなると作業を完了させるまでに多くの工数が必要になります。一台あたりに要する時間を把握した上で、全台数のキッティングに要する工数を試算し、PC引き渡しの日付から逆算してスケジュールを組むことが大切です。PCの台数によっては、手作業以外の方法も検討しておくことをお勧めします。

部門・担当ごとの設定内容

業務に必要なアプリケーションや設定内容は部門や担当ごとに異なるため、事前に確認が必要です。「特定の部門の設定内容を基にキッティングに必要な工数を見積もったが、ほかの部門では想定外に多くの時間が必要だった」ということにもなりかねません。部門が多い場合や、各部門で必要とするアプリケーション数が非常に多いといった場合、一台ずつ手作業でキッティングを実施するのは現実的ではないケースも想定されます。

同梱物の保管・管理

開梱の際には、同梱物の扱いにも注意する必要があります。デバイスの箱には、本体以外にマニュアルや保証書などが同梱されていることがほとんどです。これらの同梱物は、デバイスにトラブルが発生した際に必要になる場合があるため、基本的にすべての同梱物を保管・管理しておく必要があります。同梱物の一部を紛失してしまったり、内容を確認しないまま破棄してしまったりすることのないよう、注意しなければなりません。

設定内容の確認・設定結果の保存

デバイスごとの設定内容を控えておき、後から確認できるようにしておくことが重要です。従業員への貸与後、デバイスの設定に起因するトラブルが生じた際には、キッティングを完了した時点で問題があったのか、従業員自身が設定を変更したために問題が生じたのかによって、対応方法は大きく異なります。また、将来的に新たなデバイスを設定する際に同様の設定内容を再現できるよう、設定結果を記録として残しておくと便利です。

ボリュームライセンス購入の要否

大量のデバイスにキッティングが必要な場合、一台ずつ設定するのではなく、マスター端末の設定内容(マスターイメージ)をコピーしていく手法を「クローニング」といいます。クローニングによるキッティングを行う際には、複数のライセンスをまとめて購入できるボリュームライセンスの導入が必須です。クローニングの際にはOSやソフトウェアもコピーされることになるため、通常のライセンスでは不正コピーとみなされてしまうからです。OSやソフトウェアの不正コピーは重大な規約違反に当たるため、決して行わないようにしなければなりません。

従って、ライセンス契約の時点でキッティングを手作業で実施するのか、クローニングによって実施するのかを決めておく必要があります。

キッティングの作業方法ごとのメリット・デメリット

前述のとおり、キッティングの進め方には、手作業で行う方法とクローニングによる方法の2種類があります。手作業とクローニングは、それぞれ一長一短があることから、設定すべきデバイスの台数や機種、部門・担当ごとの設定内容の違いなどを総合的に判断した上で、適切な方法を選択することが重要です。 ここでは、キッティングを手作業で行う場合とクローニングで行う場合について、それぞれメリットとデメリットを解説します。

キッティングを手作業で行う場合

手作業によるキッティングの大きなメリットは、一台ずつ機種や設定が違う場合にも対応しやすい点です。一方で、デバイス数が多いと、全デバイスの設定を完了させるまでに相当な時間を要することがあるのがデメリットです。また、設定担当者ごとに設定内容が異なったり、設定すべき項目に抜けが発生したりといった人的ミスが起こる可能性もあります。

キッティングをクローニングで行う場合

クローニングによるキッティングのメリットは、一台のマスターイメージを作成すれば大量のデバイスを短時間でセットアップできる点にあります。マスターイメージを保存しておけば、将来的にデバイスの故障などによる交換が必要になった際にも、代替機を素早くセットアップすることが可能です。しかしながら、マスターイメージの作成や検証には相応の時間を要することに加え、複数の部門や機種が存在する場合には、パターンごとにマスターイメージを作成しなければならないことはデメリットといえます。

キッティングを実施する際の注意点

キッティングを実施する際に、必ず押さえておきたい注意点を紹介します。デバイスの運用開始後にトラブルが生じるリスクを最小限にとどめるために、大切なのは下記の2点です。

事前に作業手順を作成して入念な検証作業を行う

キッティングの作業手順を十分に検討して作成した上で、入念な検証作業を行うことが大切です。デバイスの運用後に設定ミスなど何らかの不備が発覚すれば、クローニングなどで同一の設定を行った全デバイスに対応しなければなりません。実務におけるあらゆるシーンを想定した検証を実施し、必要な設定項目をチェックシートにまとめておくことが重要です。

セキュリティ対策を徹底する

キッティングの際には、セキュリティ対策についても徹底する必要があります。キッティング完了時点のデバイスの状態が、エンドユーザーである従業員にとっての初期状態に当たるからです。初期状態でセキュリティ対策が十分に施されていれば、従業員による操作ミスや不正行為に起因するマルウェアへの感染や、機密情報漏洩といった事態を回避できる可能性が高まります。

具体的には、業務に不要なソフトウェアはインストールできないようにしたり、閲覧不可のWebサイトを指定したりすることにより、安全なデバイスの利用が実現しやすくなります。従業員個人任せにするのではなく、情報システム部が主導権を握ってセキュリティ対策を徹底していくことが大切です。

キッティングは安全かつ効率的に実施することが重要

デバイスを業務で利用する以上、キッティングはどの企業にも必須となるタスクの一つです。キッティングを安全かつ効率的に進めることで、適切なデバイスの利用を促進できます。

また、キッティングの際には、デバイスの運用開始後の管理を見据えて、クライアント運用管理ソフトウェアをインストールすることをお勧めします。クライアント運用管理ソフトウェア「SKYSEA Client View」は、デバイスの管理に必要な各種機能・ソリューションを提供するツールです。デバイスのハードウェア情報やソフトウェア情報を24時間ごとに自動収集し、一つの台帳で管理できるだけでなく、OSのアップデートや更新プログラムの適用をサポートする機能やエンドポイントセキュリティを実現するための機能も搭載しています。

さらに、「モバイル機器管理(MDM)」機能(オプション)では、iOS端末、Android端末ともに「ゼロタッチ登録」に対応しています。iOS端末、Android端末の資産登録や各種設定などのキッティングにご活用いただけます。キッティングを行う際はぜひ、「SKYSEA Client View」の導入をご検討ください。

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