OSやソフトウェアといった製品には、リリース後にセキュリティ上の弱点や欠陥が見つかることがあります。こうした弱点や欠陥を脆弱性といいますが、サイバー攻撃の標的となりかねないことから、速やかにセキュリティパッチ(パッチ)を適用しなければなりません。この記事では、セキュリティ対策を適切に講じる上で欠かせない「パッチ管理」が重要な理由や管理の流れのほか、パッチ管理にIT資産管理ツールを利用するメリットなどについてわかりやすく解説します。
パッチ管理とは、OSやソフトウェアのセキュリティや機能の更新を行うためのプロセスのこと
パッチとは、OSやソフトウェアの脆弱性を解消するために開発元が無償提供する更新プログラムのことです。このパッチを適切に適用するプロセスを「パッチ管理」といいます。パッチはもともと裁縫用語で、衣類に開いた穴をふさぐ「継ぎ当て」のことを指します。IT領域では、セキュリティ上の弱点や欠陥を「穴」に見立ててセキュリティホールと呼んでおり、その穴をふさぐ継ぎ当ての役割を果たすのがパッチです。
企業などの組織では、数多くのデバイスやソフトウェアを業務で使用します。それぞれのOSやソフトウェアに脆弱性が発見されるごとに開発元がパッチを提供するため、組織内の全端末を最新の状態に保つにはパッチ管理を適切に行うことが重要です。
パッチ管理が重要な理由
パッチ管理が重要視される背景には、いくつかの理由があります。主な理由として挙げられるのは、下記の3点です。
組織全体のセキュリティリスクを軽減するため
パッチ管理を適切に行い、組織内の端末を常に最新の状態に維持することは、組織全体のセキュリティリスクの軽減につながります。パッチは新たに発見された脆弱性に対応しており、最新のものを適用しないことは脆弱性の放置につながります。
脆弱性を放置したままOSやソフトウェアを使用し続けていると、さまざまなサイバー攻撃の標的となりかねません。一例として、マルウェアなど悪意のあるプログラムの侵入により端末が乗っ取られたり、組織の機密情報が外部に漏洩したりする恐れがあります。また、端末内のデータを不正に暗号化し、データの復号と引き換えに身代金を要求するランサムウェア被害などに遭う可能性も否定できません。こうした脅威に備えるためにも、パッチ管理を適切に実施していくことが大切です。
OSやソフトウェアを最新の状態に保つため
OSやソフトウェアの開発元から提供されるパッチには、脆弱性を解消するためのプログラムだけでなく機能改善のためのプログラムも含まれています。そのため、適切なパッチ管理により、OSやソフトウェアを最新の状態に保ちやすくなります。その結果、端末の操作性が向上したり、動作が速くなったりすることが期待でき、ひいてはシステムのアップタイム(稼働時間)の向上にもつながります。
組織のコンプライアンス意識の維持・向上のため
パッチ管理は、組織のコンプライアンス意識を維持・向上していく上でも重要なポイントの1つです。サイバー攻撃を受けた場合、取引先や顧客に関する情報が漏洩するなど社外にも損害が及ぶ恐れがあります。こうしたリスクに備え、適切な対策を講じておくことはコンプライアンス意識を維持・向上していく上で不可欠です。
パッチ管理の流れ
パッチ管理の目的はパッチを適時もれなく適用していくことですが、特定の進め方や手順が決められているわけではありません。IT資産の状況に合わせて、適切な管理方法を検討することが大切です。ここでは、パッチ管理の流れの一例をご紹介します。
1. 脆弱性情報の確認をする
脆弱性情報はしばしば更新されるため、最新情報を得る必要があります。開発元が公表している情報のほか、「独立行政法人情報処理推進機構(IPA)」のWebサイトで公開されているセキュリティ情報や、脆弱性対策情報ポータルサイトの「Japan Vulnerability Notes(JVN)」が公開している「脆弱性対策情報データベース」など、信頼性の高い情報を参照することが大切です。具体的な脆弱性の内容に加え、脆弱性を放置した場合に想定されるリスクについても把握しておくことが求められます。
2. 社内の脆弱性について把握する
社内の脆弱性について、正確に把握しておくことも重要なポイントです。現状保有しているIT資産をもれなく管理台帳に記載するほか、適用されているパッチの状況をリアルタイムで把握しておく必要があります。その上で、現状運用しているOSやソフトウェアにどのような脆弱性が存在するのかを明確にすることが大切です。
3. 最新のパッチを入手する
開発元の公式Webサイトやソフトウェアの通知などから、最新のパッチを入手します。パッチによって修正される脆弱性の情報を十分に確認し、適用の要否を慎重に検討することが大切です。パッチには機能面でのアップデートも含まれている可能性があるため、適用することでOSやソフトウェアの機能などに変更が加えられることも想定されます。パッチ適用後にどのような変化が起きるのか、ソフトウェアの変更点などをまとめたリリースノートをきちんと確認しておかなくてはなりません。
4. パッチ適用のスケジュールを作成する
パッチは、該当するすべての端末にもれなく適用する必要があります。適用漏れが生じないよう、あらかじめスケジュールを作成して計画的に進めることが大切です。パッチ適用に伴い、一時的にシステムを利用できない時間が発生したり、ネットワークの帯域が圧迫されたりすることも想定されます。できるだけ業務に支障を来さない曜日・時間帯にパッチを適用できるよう、各部門の状況を踏まえてスケジュールを組むのが得策です。
5. パッチのテストを行う
実務で使用している端末にパッチを適用する前に、テスト機による検証を実施しておくことをお勧めします。パッチ適用は基本的に脆弱性を解消するための対策ですが、適用したことによって想定外の不具合が生じることあります。業務用の端末と同じ環境か、できるだけ近い条件の端末をテスト機として使用し、パッチの検証を実施しておくのが無難です。
6. パッチの通知と適用を実施する
パッチを適用する必要のある端末のユーザー全員に適用する日時を通知した上で、パッチを適用します。管理台帳を基に、該当するすべての端末にもれなく適用できるよう、計画的に進めることが大切です。パッチ適用は従業員が各個に行う方法もありますが、可能であれば情報システム部門が一括して実施するほうが漏れや不備が生じにくくなります。
7. パッチ適用の進捗状況を確認する
パッチ適用が計画どおりに進んでいるか、進捗状況を確認します。適用時にエラーが発生するなど、さまざまな要因により、未完了となっている可能性も否定できません。該当するすべての端末にパッチ適用が完了したことを確認できれば、一連の作業は完了です。
パッチ管理でクリアしておくべき課題
パッチ管理を適切に実施するには、いくつか解決しておくべき課題があります。課題を一つずつクリアし、パッチ管理が支障なく進められる状況を築いていくことが大切です。
正確なIT資産を把握・管理する
パッチ管理のためには、組織が保有しているIT資産を正確に把握し、適切に管理していくことが求められます。漏れや重複のない正確な管理台帳を作成することはもとより、情報システム部門が把握していない端末や機器が存在していないか注視していくことが大切です。組織の管理下にない端末や機器が1台でも存在すれば、脆弱性が放置される原因となりかねません。正確なIT資産を把握・管理することは、パッチ管理の基本といえます。
パッチ適用のリスクも把握してテストを行う
パッチを適用したことによって新たな不具合や想定外のトラブルが生じるリスクがあることを十分に理解し、検証用PCでテストを行うことが重要です。検証の結果から、業務に必要な機能や操作性に問題がないことを確認した上で、業務用の実機にパッチを適用するのが安全な進め方といえます。そのため、ユーザーが使用している端末と同じ条件の検証用PCを用意しておくのがお勧めです。
パッチ適用の優先順位を決定しておく
OSやソフトウェアの脆弱性は頻繁に見つかることがあり、複数のパッチを適用する必要に迫られることも想定されます。脆弱性の深刻度や緊急度を総合的に判断し、パッチ適用の優先順位を決定することが大切です。パッチが公開されるごとに随時適用していくのが理想ですが、どのパッチをどの端末に適用したのかが不明確にならないよう、計画的に進める必要があります。
各チームの責任内容を明らかにする
各チームが負うべき責任の範囲を明確にし、責任の所在を曖昧にしないことも重要なポイントの1つです。例えば、パッチ適用を情報システム部門にて一括で実施するのか、情報システム部門からの通知を受けて各部門で実施するのかによって、適用漏れや進捗の遅延が生じた際の責任の所在は大きく異なります。パッチ管理の工程のうち、どの工程をどのチームが担当するのかを明確にしておくことが大切です。
パッチにおける認識・言語を統一する
パッチに関する認識や言語を組織内で統一しておくことも、適切なパッチ管理に欠かせないポイントといえます。例えば、情報システム部門では「パッチを当てる」と表現するのに対して、他部門では「システムをアップデートする」と表現しているようなケースでは、脆弱性への対策というニュアンスが現場に伝わりにくくなりかねません。こうした認識の相違により、パッチ適用を後回しにして業務を優先する部門が現れるなど、適用漏れの原因となることも考えられます。パッチにおける認識や言語を統一することは、組織のパッチ管理を均一に行う上で重要です。
予備計画も立てておく
パッチ管理プロセスが失敗したり、問題が生じたりした場合のことも想定し、予備計画も立てておくことをお勧めします。例えば、端末のバージョンによっては提供されたパッチに対応していなかったり、パッチ適用時にエラーが発生したりすることも起こり得るからです。予備のスケジュールを組んでおき、失敗するリスクに備えておくことにより、想定外の事態にも対応しやすくなります。
一括でパッチ管理ができる仕組みの導入も検討する
情報システム部が主導権を握ってパッチ管理を行い、組織内の全端末・機器を適切に管理していくためには、一括管理の仕組みの導入を検討するのも一案です。組織内で使用している端末の台数やソフトウェアの数によっては、パッチの運用状況をすべて正確に把握するのが容易ではないことも想定されます。手動で1台ずつパッチを適用する場合、作業に時間を要したことによって以降のパッチ管理に影響を及ぼすこともあり得るからです。一括でパッチ管理ができる仕組みがあれば、パッチの運用状況を把握することも容易になります。
「SKYSEA Client View」でパッチ管理を行うメリット
パッチ管理を適切に実施していくには、「SKYSEA Client View」を活用することをお勧めします。「SKYSEA Client View」を活用する主なメリットは下記のとおりです。
必要なパッチ情報が自動収集される
「SKYSEA Client View」を活用するメリットとしては、組織が保有しているIT資産に必要なパッチ情報を自動収集できることが挙げられます。「CPE製品名管理」機能では、利用しているソフトウェアとその脆弱性情報をひもづけ、まとめて表示できます。これにより、最新のパッチ情報を見落とすリスクの軽減や、情報システム管理者がパッチ情報を調査する工数を削減できるなど、漏れなく効率的にパッチを適用する上で有効な機能といえます。
パッチ適用作業が自動化される
「SKYSEA Client View」を導入するとパッチ適用作業を自動化でき、担当者が1台ずつ手動で作業を進める必要がなくなることもメリットです。「SKYSEA Client View」上では該当する全端末を一括管理できるため、パッチ適用を一斉に実施できます。Windowsの更新プログラムについては、PCへの配布・適用まで、管理画面上で一括管理が可能です。パッチの配布や適用作業の工数を削減できるだけでなく、適用漏れを回避しやすくなる点も大きなメリットといえます。
パッチ適用状況を自動収集し一覧表示される
「SKYSEA Client View」では、パッチ適用状況についても自動収集された情報を一覧表示で確認できることもメリットです。クライアントPCのハードウェア情報、ソフトウェア情報などを24時間ごとに自動収集し、1つの台帳で管理する機能を搭載。パッチ適用状況を1台ずつ確認する必要がなくなり、情報システム部門の工数が削減できるだけでなく、対応漏れも防げます。
パッチ管理を現実的・効率的に進められる体制を構築することが重要
パッチ管理の適切な遂行は、IT資産を保有するあらゆる組織にとって必要な取り組みです。パッチ管理を現実的かつ効率的に進められる体制を構築し、着実に実行していく必要があります。
クライアント運用管理ソフトウェア「SKYSEA Client View」は、IT資産を管理するためのさまざまな機能を搭載したセキュリティシステムです。「SKYSEA Client View」の管理下にある端末の中のソフトウェアも管理でき、脆弱性をなくすセキュリティパッチの適用・アップデートを複数の端末へ一斉に行うことができます。
また、「SKYSEA Client View」は、セキュリティ・脆弱性に対して外部からの検査を行うとともに、脆弱性の診断結果を公表しています。各種セキュリティ・脆弱性に関する情報もいち早く提供し、お客様が安全に商品をご利用いただける環境を常にご用意しています。パッチ管理に不安を抱いている事業者様は、ぜひ「SKYSEA Client View」の導入をご検討ください。
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