医療・福祉
自治医科大学は、医療に恵まれないへき地等における医療の確保及び向上と地域住民の福祉の増進を図るため、1972年に全国の都道府県が共同して設立した大学で、附属病院は、1974年に開院し、地域医療確保の先駆的な役割を担うとともに、本学の教育理念を実践に移す場として、高度の医療施設及び設備を整えています。患者の信頼に応えられるようきめ細かな配慮を行うなど医療内容の一層の充実に努めています。
当院のネットワークは、インターネット接続が可能な情報系と電子カルテやオーダリングシステムなどのHIS系(医療系)に分かれていて、システム運用管理室の4名と、実務支援のヘルプデスク担当6名の体制でHIS系ネットワークとHIS系システム全般の運用管理を担当しています。HIS系ネットワークに接続している2,000台以上のPCの管理をはじめ、電子カルテに関わるシステムの導入から運用管理も行っており、人的なリソースの問題もあって業務負荷が高い状態でした。そんななか、外来エリアのリニューアルによる拡張工事を行うことに。その際、PCやプリンターなどの機器が実際にどれくらい不足しているのか、余剰を抱えている部門がないかなど、増設に伴う機器の必要台数の算出に非常に苦労しました。この経験からIT資産情報を自動で収集できるツールの導入を検討しました。
管理ツールの要件としては、IT資産管理機能が充実していることとリモート操作の機能を搭載していることでした。当院は本館以外にも「とちぎ子ども医療センター」などが併設され、敷地内に複数の建屋が存在しています。端末にトラブルが発生すると現場へ出向いて対応をする必要があり時間がかかってしまうため、診療に影響が出ることがあります。リモートで対応を行えるようになることで、移動の必要がなくなり問題の解決にかかる時間を短縮できるので現場への影響を軽減できると考えました。
製品選定時には、他社のツールと比較・検討しました。当院の情報系ネットワークにはすでに「SKYSEA Client View」が導入されていて、系列病院からも使いやすさについては事前に聞いていたので、実際にデモンストレーションを見て操作性に納得できたことから導入を決めました。
病棟にあるHIS系ネットワークに接続しているPCのメンテナンスをする際は、再起動に注意が必要です。病棟は24時間稼働しているため、深夜でも電子カルテへの入力作業などを行っている可能性があり、どのタイミングで再起動を行うかが非常に難しいからです。当院では「メッセージ」機能を利用して、メンテナンスによってPCの再起動が発生する日時を職員へ告知しています。このとき、一度だけの表示ではメッセージを見落としてしまう可能性があるため、何度も繰り返し告知し注意喚起を徹底しています。
また、システム上で障害が発生した際には、医師や看護師へ状況を伝える手段として活用しています。システム障害が起こって診療に遅れが出る場合、理由がわからないまま患者の方々をお待たせしてしまうと不安を与えてしまいますが、医師や看護師が状況を把握し説明できることでその不安を和らげることができると思います。状況を素早く現場へ伝えるためにも、メッセージの表示は欠かせない機能となっています。
HIS系ネットワークに接続しているPCは共有で使用しており、Windowsへのログオンは共通のIDとパスワードを使用、電子カルテのログインは個人のIDとパスワードを使用しています。そのため、障害が発生した時刻の使用者を割り出すには電子カルテの個人IDでログを確認する必要があり、特定に時間がかかっていました。PCに障害が発生した際には使用者への状況の聞き取りが欠かせないため、使用者の特定をスムーズに行えるよう、PCの操作ログと電子カルテのログを同時に確認できる連携機能のオプションを導入しました。別々に確認していたログをまとめて見られるようになったことで、二度行っていたログの検索が一度で済むようになり作業効率が向上したと感じています。
また、PCのトラブル発生時にメーカーへ問い合わせる際、電話やメールではうまく現象が伝わらないことがあり、実際の発生状況を詳細に伝えられる手段を探していました。「SKYSEA Client View」にはPCの操作画面を録画できる機能があることを知っていたので、オプションの「画面操作録画」機能を追加で導入しました。旧バージョンの電子カルテを使用中にトラブルが発生したことがあったのですが、録画したデータを電子カルテメーカーに直接確認してもらい口頭での問い合わせよりも視覚的にわかりやすく伝えることができました。
「SKYSEA Client View」導入以前のIT資産管理は、Excelで作成した管理台帳を手作業で更新していたのですが、更新作業が追いつかず最新の情報とは異なる状態で運用していました。現在は、設定した時間に毎日最新の情報を自動で収集できるようになり、IT資産管理にかかる負荷が軽減されました。
そのほか、情報セキュリティ対策の強化にも活用しており、許可なく外部へ情報が持ち出されないようUSBメモリやCDーRなどデバイスの使用制限を設定しています。
また、多くのPCが複数の病棟に点在しているため、PCが所属する部署まではわかってもフロアのどのあたりに設置されているのかわかりにくいことがあります。トラブルなどで急な問い合わせを受けたとき周辺機器の状況理解が必要な場合もありますので、該当のPCを視覚的に確認できる「フロアレイアウト表示」機能(オプション)を導入しました。現在はレイアウトの登録を行っているところですが、ヘルプデスク業務の負荷軽減につながることを期待しています。
2018年5月取材
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