このコーナーでは、クラウドベンダー各社にサービスの特長や導入のメリットについてお話を伺います。
第2回は、Google Cloud についてグーグル・クラウド・ジャパン合同会社様にご協力いただきました。
Googleは創業以来さまざまなサービスを生み出すとともに、YouTubeなどの企業を買収して事業を拡大してきました。それらはすべて米国カリフォルニア州に本社を置く持株会社Alphabetの傘下に属しています。その中の1つがGoogle Cloudです。
Alphabetに属する企業のインフラは共通で、Google Cloudは皆さんがよくご存じの検索エンジンを支えているプラットフォームの1つでした。非常に便利なツールだったことから、その後、事業として立ち上げ「Google Cloud Platform(GCP)」としてお客様へ提供することになります。最初は、PHPやJavaなどの言語を使用してWebアプリケーションを開発するためのプラットフォーム「Google App Engine(GAE)」の提供でした。「Google Cloud」の事業拡大には、Webアプリケーションをエンジニアの方々に支持していただくことが欠かせません。エンジニアの方々がインフラを意識せず、簡単に開発に取り組める環境を提供することも「Google Cloud」の役割です。
また、Googleといえばオープンソースというイメージを持たれている方は多いと思いますが、提供しているサービスのプラットフォームもオープンソースなので、ロックインせずほかのクラウドサービスやオンプレミスへの移行が容易なことも選ばれている理由の1つです。オフィスツールの「Google Workspace」も以前から移行のしやすさに好評をいただいていましたが、最近はテレワークの普及に伴い場所を問わずコラボレーションできることや、さまざまなツールのライセンス費用を1つにまとめられるコスト削減の観点から選ばれています。オフィスツールの提供は、コンシューマー向けの製品だったGmailの人気が非常に高かったことから、これを事業ドメインにしてみようという発想で、「Google Apps for Business」として法人向けにアップグレードして提供したのが始まりです。その後2016年に「G Suite」、2020年には「Google Workspace」へ名称を変更して、コラボレーションに特化したグループウェアとして進化を続けています。
とにかく、エンジニアが何も気にせずコードに集中できる環境を提供したかったからです。インターネットをより良い環境にしていきたいというのが、当社のコンセプトですが、インターネットはまだまだこれから発展していく世界なので、Webアプリケーションをたくさん作って技術を進化させる必要があります。そのために私たちができることは、オンプレミスの延長線としてのIaaSではなく、PaaS領域である開発環境の解放、「GAE」の提供でした。
これまでのクラウドは、オンプレミスで培われてきたIT技術をクラウド化しようとするリフト&シフト目的の導入が多く、この用途では「Google Cloud」よりも先行していたパブリッククラウドを選ばれることが多かったと思います。それに対し、クラウド環境で一から新しいシステムを作る場合には「Google Cloud」を選んでいただけているように感じています。クラウドは、一時的に大量のリソースを必要とする場面で多用されますが、インターネットゲームもその1つです。複数の処理を同時に行うトランザクションが大量に発生するため、参加人数のピーク時に合わせてシステムを構築していたら、ハードウェアの調達は間に合いませんし、お金がいくらあっても足りません。インターネットゲームのように大量の処理が短時間に発生するシステムでは、データベースの負荷を分散させるために世界中のデータセンター間でトランザクションの管理をシャーディングします。しかし、それぞれのデータセンターがトランザクションの整合性を保とうとして発生するのが、サーバー間の物理的な距離の問題です。光の速度にも遅延は発生しますので、物理的な距離が一定数を超えるとトランザクションの整合性は担保できなくなってしまいます。これは、1つのサーバーの時計を地球の裏側で起こっているトランザクションにも適用するために発生する現象なので、世界中のデータセンターの中に最も正確な時刻を刻む原子時計を装備して、時刻が必ず同期する仕組みを作ることで解決できます。Googleでは、データセンターのデータベース「Cloud Spanner」に原子時計を持たせ、すべてのタイムスタンプを同期していますので、これまで問題になっていた距離の問題からくる制限を意識する必要がありません。「Google Cloud」はピーク性があるインターネットゲームでも、ユーザーがストレスを感じることなくプレイできる環境を提供できるため、インターネットを活用したこれからのビジネスを見据えて採用いただくケースが増えています。
Googleは、2007年に排出したカーボン(炭素)を実質的にゼロにするカーボンニュートラルを実現しています。さらに、2030年までにカーボンを排出しないカーボンフリーへの移行を宣言しています。日本政府もカーボンニュートラルの実現に向け、カーボン排出量を2013年度比で2030年までに46%削減すると宣言しましたので、大手企業を中心にどうやって減らしていくかが課題になっています。当然、情報システム部門にも削減案の提示が求められるはずですので、すでに頭を悩まされているご担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。これは世界的な取り組みなので、海外で事業を展開されている場合、その国の基準も守らなければなりません。Googleは、2030年までにカーボン排出量をゼロにする目標達成に向けた挑戦にコミットしていますが、すでにサービスの70%は再生可能エネルギーで提供しています。カーボン排出量は取引できるため、これ以上排出量を抑えるのが難しい段階になったとき、Googleに任せてしまうという方法もあることを、ぜひ覚えておいてください。
テレワークを取り入れている企業・組織の多くが、オンライン会議システムやビジネスチャットなど、業務効率やコミュニケーションを重視してさまざまなツールを導入されていると思いますが、私どもがそれらの用途で使用しているのはもちろん「Google Workspace」です。ゼロトラストでは厳重に認証を行うことが重要で、多要素認証が推奨されています。認証は導入したツールそれぞれに必要で、別々のツールを連携させようとすれば、そこに運用管理が発生しますが、「Google Workspace」はメールもチャットもオンライン会議システムも1つのグループウェア内で完結するので、認証は共通です。ハードウェアキーや生体認証でセキュリティも担保されますし、ブラウザベースで動作が軽くテレワークでも快適に業務が行えています。また、脆弱性対策はセキュリティを担保するために欠かせませんが、一つひとつのサービスに対して実施しなければなりません。「Google Workspace」であれば、数種類のツールそれぞれに必要な脆弱性対策が1つになるため、対応にかける工数削減にもつながります。セキュリティ対策はかけ算なので、1つでも対応の不備があればすべてゼロになってしまいますから、減らせる作業は減らし集中して対応できる環境にしておくことも重要だと思います。
2020年にテレワークを緊急で導入した企業の多くが、VPNの脆弱性や通信量の増加による通信の遅延などの問題で苦労されたと思います。Googleの社員は、VPNを使わず日常的にリモートで社内ネットワーク内のリソースにアクセスできるシステム「BeyondCorpリモート アクセス」を使っているため、VPNに伴うトラブルとは無縁です。もちろんこれも「Google Cloud」のお客様に提供しているサービスで、VPNが不要でコスト削減にもつながり、ゼロトラストセキュリティの考え方に基づいていることもあり、このところお問い合わせが増えています。
日本のお客様が安心してサービスを活用いただける取り組みを強化しています。政府が求めるセキュリティ要件を満たしているクラウドサービスをあらかじめ評価・登録するシステム「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(通称:ISMAP)」への登録もその1つです。現時点で登録されているクラウドサービスが少ないことからもISMAPに登録されるハードルが高いことがおわかりいただけると思います。
今、情報システム部門の方々には、PC環境のブラウザ指向への移行やVPNからクラウドへネットワークを切り替えるなど、運用コストや管理工数がかかっているレガシーなものをできるだけ減らし、ビジネスを伸ばしていくために攻めのITに投資していくことが求められています。表計算やワープロなど従来のビジネス用アプリケーションやオンライン会議システム、チャットツールを「Google Workspace」に切り替えてライセンス費用を下げることも、手段の1つになると思います。特にコラボレーションによってビジネスをうまく軌道に乗せる文化に変えていきたいと考えられている企業には、Googleのサービスがお勧めです。
Googleでは、何かをやろうとした際に何らかの制限のためにそれができないのであれば、その制限をなくすことでどこまでできるのかを考えます。例えば、車の性能を10%・20%向上させるのであれば、これまでのやり方のなかで考えていけると思いますが、10倍・20倍にするためにはどうすればいいのか、車で月に行くためにはどうしたらいいのかを考えるのがGoogleの文化です。今後、さまざまな業界でAIや機械学習が事業継続に欠かせないものになっていくと思われますが、そこではこれまでの延長線ではない発想の転換が求められます。そのとき「Google Cloud」でシステムを構築してみよう、Googleと一緒にやってみようと思っていただけるよう、当社の取り組み・姿勢を多くの方に知ってもらえることも必要だと考えています。Googleは、エンジニアの方だけでなく、新しいことを始めようとしている、何か面白いことをやろうとしている企業や人ファーストなクラウドベンダーです。
グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 https://cloud.google.com/
Google Cloud は安全かつオープン、インテリジェントで斬新なエンタープライズ クラウド プラットフォームを提供するグローバル リーダーとして広く認められています。このテクノロジーは Google のプライベート ネットワーク上に構築されており、セキュリティ、ネットワーク アーキテクチャ、コラボレーション、人工知能、オープンソース ソフトウェアに関する20年近くにわたるイノベーションが結実したものです。シンプルな設計のツール群と優れたテクノロジーを Google Cloud と Google Workspace で提供し、人、分析情報、アイデアを結びつけています。今日のデジタル世界に対応するため、150か国以上のお客様が Google Cloud を利用してコンピューティング環境をモダナイズしています。
(「SKYSEA Client View NEWS vol.79」 2021年8月掲載 / 2021年5月オンライン取材)