アドバンテージはオンプレミスとの親和性の高さ
マイクロソフトが目指すのは
誰でも使えるAIの提供

このコーナーでは、クラウドベンダー各社にサービスの特長や導入のメリットについてお話を伺います。
第4回は日本マイクロソフト株式会社様にご協力いただきました。

速やかな更新プログラムの提供など
Windowsで培った経験を継承

今「Azure」は絶好調ですが、要因は何だとお考えですか?

日本マイクロソフト株式会社
Azureビジネス本部
岡本 剛和

お客様のニーズや時代の変化に合ったサービスをご提供できていること、これが一番の要因ではないかと分析しています。モバイルワークの普及など、ITの利用環境はこの数年で大きく変わりましたが、そのような変化に追随して新しいサービスを届けることが多くの分野で求められるようになっています。ソフトウェアの開発においても次々に変化する市場の要求に素早く応えるために、工程が短縮できるアジャイル開発が主流となるなど、クラウドとの親和性が高い環境が必要とされている背景もあります。

当然、すでにマイクロソフトの製品をお使いになっているお客様にとって「Microsoft Azure(以下、Azure)」が同じマイクロソフトのサービスだということもあります。このように企業・組織でマイクロソフトの製品・サービスを使い続けていただけるのは、Skyさんのようなソフトウェアベンダーさんが支えてくださっていることも関係しています。

また、テレワークの急速な普及で、リモートでも安全に業務が行えるニーズが高まり、「Azure Virtual Desktop」の利用や、オフィススイートを「Microsoft 365」に切り替えるお客様が急増しました。それに伴いテレワークを導入された企業を中心にゼロトラストを意識したセキュリティ対策が進み、ゼロトラストのためにマイクロソフトのクラウドサービスを選ばれるお客様も増えています。

経営者にとっての「Azure」導入のメリットについてお聞かせください。

私どもからは、主にアジリティとコストメリット、エンタープライズグレードの3つを発信しています。アジリティは何かをやりたいと思いついたときすぐに試せる機敏性や、めまぐるしい変化への対応力を意味しますが、これはクラウドサービス全般の特長です。COVID-19のようにビジネスのやり方を急激に変化させなければならない事態が突然やって来たとき、クラウド・バイ・デフォルトの企業・組織であれば、最新技術をPaaS(Platform as a Service)のシステムとして取り入れて即座に変化へ対応できます。近年、過去の実績を分析するために、光学文字認識技術のOCR(Optical Character Recognition)を活用して、文字認識を省略化する動きが目立っていますが、これもアジリティの一例です。手書きや出力した紙しか残っていない伝票の文字をデジタルデータとして取り込めば、商品の売れ筋や確保しておくのに適切な在庫数の予測をAIに任せることが可能になります。人が入力するよりもはるかに速く最終判断できるなど、ビジネスにアジリティな取り組みがもたらすメリットは小さくありません。

コストメリットにつながるのがAIです。これまで数万~数十万円かかっていたモックアップが数千円で作れるようになったり、都度払いのpay as you goが選べるのもクラウドのメリットの1つで、使いたいときに使ってやめたいときにすぐにやめられる気軽さがあります。使ってみて納得できれば、お得な長期利用の契約に移行することも可能です。

最後のエンタープライズグレードは、機能比較の○×表では伝わらない「Azure」ならではの価値です。多くのお客様が、Windows上でミッションクリティカルなシステムを稼働されていますが、そこで私どもが培ってきた経験を「Azure」にも継承しました。システムに問題が見つかったときには「速やかに更新プログラムを提供する」「説明責任を果たす」、これらを自社だけでなく販売パートナー様を通じて長年お客様に提供してきた実績は「Azure」にも生かされています。

求められることはお客様によって異なりますが、これら3つはこれからのビジネスにとってプラスに働く要素として、経営層の方にも納得いただけるのではないかと思います。

優良顧客が利益を生み出す時代
「Azure」で顧客満足度向上につながる活動を

国家主導のイメージが強かったスーパーコンピューターですが、マイクロソフトでもAIの計算に特化した高性能なスーパーコンピューターに力を入れられていますね。

医薬品を作る際のシミュレーションには膨大な量の計算が必要で、スーパーコンピューターでなければ対応できません。そのほかにも交通渋滞の予測と回避や災害に対するリスクの把握など、AIを活用した計算目的で一時的にスーパーコンピューターのパワーを使用したいと考えられているお客様も多くなっています。そこで、マイクロソフトはAIを研究する非営利団体OpenAIと共同でスーパーコンピューターを開発。負荷が高まる計算量が増えても快適に「Azure」をご利用いただけるよう、引き続き環境を整えていきます。スーパーコンピューターやAIというと、エンジニア以外の方にとって無関係なものだと感じられるかもしれません。しかし、すでにAIは一般のお客様にとっても身近な存在です。「Microsoft PowerPoint」の画面右側に、スライド内の画像を自動認識して表示されるデザインアイデアをご覧になったことはないでしょうか。また、「Microsoft Word」や「Microsoft Outlook」で文字を入力すると変換間違いの可能性や、カンマはいらないのかと提案された経験があると思います。これらはすべてAIの機能です。もちろん「Microsoft Defender」のふるまい検知も同様です。

マイクロソフトのAI戦略、「AIの民主化」についてお聞かせください。

AIは実装・活用のハードルが高いものと考えている方が多いと思いますが、その現状を変えるため「誰でも使えるAI」を搭載した製品やサービスの開発を進めています。すでにAIは先ほどお話しした「Microsoft Outlook」や「Microsoft PowerPoint」のように、利用者が意識していない場面で普通に使われるようになりましたが、開発分野でも特別な技能を持たない人がAIを活用してアプリケーションを開発できるツールのご提供が始まっています。

例えば、物体を認識させるためのアプリケーションを作るとします。通常はプログラム開発言語を使ったコーディングが必要ですが、「Microsoft Power Platform」を活用すればコーディングは不要、またはほとんど必要ありません。認識させたい対象物のデザインを作成して「Microsoft Power Platform」に読み込ませ、いくつかの必要事項を入力すればノーコード、ローコードでアプリケーションが開発できてしまいます。自分たちがイメージしたものをスモールスタートで形にしてみたい場合などに利用すれば、その都度SIerへ依頼する必要がなくなります。

マイクロソフトはさらに多くの方にAIを身近に感じていただけることを目指して、製品やサービスの開発を続けていきます。

弊社でも「Microsoft Dynamics 365」を活用したサービスを提供していますが、「Azure」や「Microsoft Power Platform」を活用すれば、さまざまなお客様で新たなビジネス展開の可能性が広がりそうですね。

契約文書の間違いを自動で検出できるサービスを提供されているソフトウェアベンダーさんなど、マイクロソフトのサービスから新たなビジネスを創出されているお客様が増えています。「Azure」の事例に登場いただいているカルビー株式会社様では、リレーションシップマーケティングを目的とした顧客と商品購入情報の紐づけに「Azure」の画像・文字認識機能を活用されています。カルビー様では、商品の購入者が応募すると抽選で景品が当たる大規模キャンペーン「大収穫祭」を毎年実施されていますが、応募方法がはがきのみだったため、お客様とはアナログなやりとりのみで、景品送付後には交流が終わってしまっていました。Instagramでバズると商品が爆発的に売れる時代であることからもわかるように、今、企業にとってデジタルデータを介した顧客とのコミュニケーションは非常に重要です。そこで、お客様との関係性を築くことを目指し、まず応募方法の切り替えを検討。試行錯誤の上、商品購入後に中身が空になったパッケージを折りたたんでから、製造番号を撮影した写真を送ってもらう方法に決まります。送られた写真に写っている数字を読み取るOCRに「Azure」のPaaSを使用したことで、従来のデジタル化への移行のような多額の投資不要でシステムが構築でき、稼働までの期間も短縮できたそうです。

この事例で語られているのは、単に紙のはがきをデジタルに置き換えた話ではありません。また、収集したデータを分析してわかる、20~30代前半のF1層の女性にはどの商品が売れているのか、誰にどういった広告でメッセージを伝えるのが効果的なのかといったデジタルマーケティングの効果だけでもありません。デジタル上に顧客の意見を集約して満足度向上につなげ優良顧客となってもらうことで利益の獲得を目指す。そこにITがどのように活躍しているのかをお伝えしている事例です。

セキュリティ対策の視点では、クラウドはオンプレミス以上にID管理が重要になるように思います。

セキュリティの強化にはさまざまなポイントがありますが、その中でもアイデンティティ管理は基本中の基本です。行動分析などのトラッキングをIPアドレスからやろうとしても、そのPCを使っていたのが誰なのかまではわかりません。トラッキングやアクセス制御は人に紐づいているから効果が表れます。「オカモト」という人が「オカモト」としてログオンすることは、企業・組織のネットワークを守る根本です。「生体認証」や「所持認証」などパスワード以外の要素を使った認証を取り入れることもすでに当たり前の対策と言えます。まだ取り入れられていないのであれば、早急に検討いただきたいと思います。ちなみに私は「Windows Hello」を使用して認証していますが、テレワーク中に家族がPCを触ってしまうことがあっても、顔認証ではじかれるので安心です。

また、「Azure AD」は各種クラウドサービスに対応していますので、導入いただければサービスごとにIDやパスワードを入力する煩わしさがなくなるため、利用者にも喜んでいただけると思います。

他社のクラウドサービスから「Azure」に切り替えるお客様に共通の傾向はありますか?

パブリッククラウドサービスでWindowsのクライアントOSを搭載できるのは「Azure」だけなので、クライアントOSしかサポートしていないアプリケーションをクラウドで使うことを目的としたお客様が多いように思います。また、当社はオフィススイートの「Microsoft 365」をはじめ「Auzre AD」や「Microsoft Dynamics 365」など、セキュリティやアプリケーション開発に至るまであらゆるご要望にお応えできるソリューションをご提供しています。すべてをマイクロソフトのサービスに統一すれば親和性が高まりますし、ワンストップでサービスやサポートを受けられることの安心感も得られます。これらをご提供できるのは、当社ならではと言えるのではないでしょうか。

「Windows 365」がリリースされましたが、「Azure Virtual Desktop」との違いについてお聞かせください。

「Azure Virtual Desktop」と「Windows 365」は、どちらもDaaS(Desktop as a Service)に分類されるサービスですが、主に4つの違いがあります図1。「Azure」のサービス「Azure Virtual Desktop」は、1つの仮想マシンを複数人で使用できますが、その中の1人が重たい作業を実行するとほかの人にも影響が及びます。しかし、権限設定など自社のポリシーや要求に合わせて細かく管理できるので、「Azure」を熟知した担当者がいらっしゃる企業・組織には向いています。もっと簡単にクラウドでWindowsを使いたいのであれば、個人専用の仮想環境を使用できる「Windows 365」をお薦めします。「Windows 365」は、専任のITご担当者がいなければ難しいクラウド上のネットワーク設定など、管理の多くをマイクロソフトに任せてしまうことができます。

図1「Azure Virtual Desktop」と「Windows 365」の違い

先日「Windows Server 2022」がリリースされましたが、オンプレミス製品も継続されるのでしょうか?

Windows Serverだけでなく「Microsoft SQL Server」などのサーバー製品は、今後も継続して開発を続けます。お客様の多くが、特定のデータの処理はオンプレミスで続けたいニーズをお持ちですので、クラウドもオンプレミスも同時並行で開発します。今後もクラウドとオンプレミスのハイブリッド環境でシステムやデータを運用する企業・組織が増えていきますが、両者の親和性の高さはどちらも提供してきたマイクロソフトの強みだと感じています。

情報システム部門の方へメッセージをお願いします。

マイクロソフトのビジネスの根幹は、お客様のビジネスをお手伝いすることです。「Azure」などのサービスや技術でお客様を支援し、DXを推進していただくために伴走することが私どものミッションだと考えています。マイクロソフトのクラウドサービスがお役に立てるシーンは皆さまのビジネスの必ずどこかにあると思います。まずはマイクロソフトのクラウドサービスをお試しいただき、ぜひお客様のビジネスを発展させていくお手伝いを当社にご依頼ください。

Sky株式会社の「Microsoft Dynamics 365ソリューション」についてはこちら
https://www.skygroup.jp/software/development/microsoft-dynamics-365.html

日本マイクロソフト株式会社 https://www.microsoft.com/ 日本マイクロソフト株式会社は、マイクロソフト コーポレーションの日本法人です。マイクロソフトは、インテリジェントクラウド、インテリジェントエッジ時代のデジタルトランスフォーメーションを可能にします。「Empower every person and every organization on the planet to achieve more.(地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする)」を企業ミッションとしています。
日本マイクロソフトは、この企業ミッションに基づき、“Transform Japan, Transform Ourselves” を掲げています。お客様に寄り添いながら、日本の社会変革に向けたデジタルトランスフォーメーションを推進し、日本経済の再生や日本社会の活性化に貢献します。
また、我々自身も変革し続けながら、その経験と学びをお客様に共有し、真の価値を提供します。

(「SKYSEA Client View NEWS vol.81」 2021年11月掲載 / 2021年9月オンライン取材)

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