近年急速に普及が進むクラウド・コンピューティング(以下、クラウド)は、すでに企業・組織の情報システムの選択肢の一つとして広く認められています。現在、さまざまなクラウドベンダーからサービスが提供されていますが、圧倒的なシェアを占めるのがアマゾン ウェブ サービス(以下、AWS)です。AWSはなぜ、お客様に選ばれているのか、その理由についてお話を伺いました。
近年急速に普及が進むクラウド・コンピューティング(以下、クラウド)は、すでに企業・組織の情報システムの選択肢の一つとして広く認められています。現在、さまざまなクラウドベンダーからサービスが提供されていますが、圧倒的なシェアを占めるのがアマゾン ウェブ サービス(以下、AWS)です。AWSはなぜ、お客様に選ばれているのか、その理由についてお話を伺いました。
アマゾン データ サービス ジャパン株式会社
技術本部 技術本部長
玉川 憲 氏
AWSは、2006年のサービス開始以降、初期費用無料で利用した分だけ課金する従量課金モデルのインフラストラクチャ・サービスをご提供しており、その種類は現時点で30種類以上に及びます。世界約190か国で数十万のお客様にご利用いただいており、インターネットやゲームなどのソーシャル系ビジネスを展開されているお客様だけではなく、大企業や官公庁、教育機関といった幅広い業種でAWSのサービスをご活用いただいています。
日本でも、2011年3月、東京リージョン(東京のデータセンター群)を開設してサービスを提供していますが、開設から約2年半で、すでに2万以上のお客様にご利用いただいています。
ビジネスにおいては、社内でさまざまな業務システムを稼働させたり、Webサイトを活用して外部へ情報を提供するといったことが、恒常的に行われています。しかし、オンプレミス環境でそれらを運用していくには、自社でサーバーを購入したり、データセンターを管理するなどの投資が必要でした。
AWSのようなクラウドサービスは、そういった初期投資が不要なだけでなく、運用管理を担う優秀なエンジニアを雇う必要もありません。さらにAWSは、大規模かつ高性能なクラウドサービスを初期費用不要の従量課金モデルで利用できます。これにより、お客様のビジネスのコア・コンピタンス(他社がまねできない中核的な力)が発揮できるような部分に、資金や技術、人材などの大切なリソースを集中できるようになります。AWSが多くのお客様にご利用いただけているのは、お客様にとって「競合他社とビジネスを差別化しやすくなる」ということに尽きます。
日本国内のお客様の場合、東京リージョンのAWSのサーバーには、数ミリ秒という速さでアクセスできます。東京リージョン開設以前は、アメリカやシンガポールのサーバーをご利用いただいていたため、わずかに遅延がありました。東京リージョンをご利用いただくことで、通信レスポンスの速さを実感していただけるようになったことが、国内のお客様が増加している要因の一つだと思います。それは、日本市場をターゲットにビジネスをされているお客様にとっては、お客様自身の顧客に対しても性能の高いサーバーを提供できるということでもあります。
また、コンプライアンスの観点から、国外にデータを置きたくないというお客様のご要望にお応えできるようになったこともあります。さらに、副次的な理由として、2011年3月の東日本大震災の発生によって、これまでのように自社内でサーバーを運営していくことが「必ずしも最良の選択とは言えない」という議論が起こり、自社でデータセンターを管理するだけではなく、クラウドでバックアップを取りたいというニーズが高まりました。AWSが、そうしたニーズに対して即時に応えられるサービスに成長したことも、国内での普及に大きな役割を果たしていると思います。
冒頭でお話ししました初期費用無料で使った分だけ料金を支払う従量課金制のほか、可用性(アベイラビリティ)が非常に高いこと、数十台でも数百台でも使いたいときに使いたいだけサーバーが使えるという柔軟性や拡張性(スケーラビリティ)は、クラウドが持つ大きな特長です。
そのなかでAWSは、クラウドという言葉が存在しなかった時代からクラウドサービスを提供してきました。当初は、現在から比べるととてもシンプルなサービスからスタートしましたが、ご利用いただいているお客様のご意見を伺いながら進化を繰り返してきました。その結果、現在は30種類以上のサービスを提供できるようになり、さまざまなお客様のご要望にお応えできるサービスに成長しました。また、機能面だけでなく、セキュリティレベルの向上やサーバーを安定して稼働させるための可用性の対策を行うことで、数十万のお客様へ「安全なクラウド」を提供してきた実績は、AWSの大きな価値であると言えます。
Amazonの企業理念とも言えるのが「お客様至上主義」です。すべてのビジネスにおいて、常にお客様の立場で考えることをポリシーとしています。お客様のニーズやお困りになっていることに耳を傾け、サポートできるサービスを作り、できる限り早く提供することを大切にしています。
さらに、AmazonのDNAとも言えるのが「イノベーションを起こす」ことです。これまでも、電子書籍のKindleやeコマースにおけるレビューやリコメンデーション機能など、革新的なイノベーションを起こしてきました。AWSにおいても例外ではなく、常にお客様のご要望にお応えするためのイノベーションを起こすことを重視しています。
そのための手法として、普通なら製品開発後に作成するプレスリリースを、Amazonでは製品の開発前に作成します。最初にプレスリリースを書くことで、お客様にとって大切な価値は何か、そのために何を提供しなければいけないかを、チームでしっかりと確認することができるため、これは私どもにとって非常に重要なプロセスです。
その後、開発チームがプレスリリースの内容にそって、できる限り早くお客様に製品が届けられるよう開発を行います。ここで重要なのは、最初から大きな製品を作るのではなく、お客様のニーズに応えられる最低限の機能をしっかりと作ることです。そして、その機能を市場に届け、お客様からご意見をいただいて、さらに機能改善を積み上げていくという流れです。