INTERVIEW シスコシステムズ合同会社様

海外との無線LAN活用の違いから見る 企業における無線LANの現状と今後の展開

「可視化」と「自動調整」が無線LANの安定稼働の要になります

無線LAN環境を整備する際には、何をポイントに考えればよいでしょうか?

電波品質の可視化と指標化(CleanAir & AirQuality)の画面。

まずは「可視化」です。電波は目に見えませんので、どんな干渉源があるかわかりません。ですので、どんな干渉が起きているのかを確認できる手だてがあることが重要です。また、万が一トラブルが起きてしまったときのために、原因を探るためのログ(記録)がきちんと残せることも必要です。簡単に言えば、医師が患者を診察するときに、さまざまな検査を行って原因を特定し、正しく対処されるのと同じです。無線LANもトラブルが起きれば、その場所の、その時間の環境が、どんな状態だったのかがわかれば、再発防止策を具体的に検討することができます。中には「ログは見ないから」とおっしゃる方もいますが、ログがなければ専門家やベンダーに依頼しても問題解決はおろか原因の特定すらできません。

次に、「自動調整」の仕組みです。干渉のたびに障害が起きては使いものになりません。干渉源がある場合には、自動的にチャンネルを変えるなどの調整を行う仕組みが必要です。実は、安価な家庭用の無線LANアクセスポイントにも似たような機能はありますが、多くの場合は、電源のON / OFFの際に環境をチェックして調整するという処理を行います。しかし、周囲の電波状況は常に変化しているため、電源を入れた時点では問題がなくても、何かのきっかけに影響を受けることがよくあります。周囲の環境を常時監視し、干渉があった場合にはどういった干渉なのかを解析して、内部でシミュレーションを行った上で、適切なチャンネルに変更するという処理が必要になります。

シスコ製品を導入するメリットについてお聞かせください。

過去に無線LANのトラブルを経験して、当社製品に切り替えていただいたお客様からは、トラブルから解放されたというお話を伺うことが多いです。安定した無線LAN環境の構築には、電波の干渉への対策をはじめ、さまざまな対策が必要ですが、そうした対策が考慮されていない製品を導入したために、トラブルに見舞われるケースがよくあります。図1

図1無線LANの安定稼働を阻害する一例

無線LANの安定稼働を阻害する一例

ある大学では、導入するシステムを学部ごとに選定されているため、1つの大学の中に複数のメーカーの無線LAN機器が存在しています。これまでに当社の製品を導入した学部ではトラブルは発生していませんが、価格の安さを重視して干渉などの問題が考慮されていない製品を導入された学部では、導入後にトラブルが頻発したそうです。そのため、担当者が対応に追われることとなり、かえって人件費などのコストがかさむ結果になったとお聞きしています。

当社の製品は干渉や電波出力など、無線LANの安定稼働に必要な機能を搭載していますので、日々の運用管理やトラブルシューティングにかかる人件費を抑えることができます。今、ほとんどの企業では、社内のITにかかわる人員を増やさない方向だと思いますので、導入時のコストが若干高くても運用コストを抑えることを考えた製品選定が必要だと思います。

当社の製品は、世界中のさまざまなお客様にお使いいただいており、あらゆるケースを経験しています。非常にレアな使い方をしたために起きてしまったトラブルについても、この機能をONにすれば解決できるといったような回避策も数多く持っています。これは、さまざまなお客様の声にもまれて製品の改良を重ねてきたからこそできることだと自負しています。お使いいただいているお客様が多いことで、お客様への対応で得たお役に立つ知識が豊富にあり、お客様によるインターネット上のコミュニティからも情報が得られるという付加価値は、当社の製品を選んでいただく上での、大きなメリットではないかと考えています。

数年間の運用コストまで考慮するとシスコ製品はお得と言えるのでしょうか?

大金氏

お客様にとって、機器や通信状況に問題が起きず情報システム部門の負担が減ることは、同じ機器を長期間運用できることにつながります。5年くらいのスパンで計算してみると、当社の製品を導入した方がコスト面でも優位性があるはずです。無線LANの導入や入れ替え時には、初期コストだけでなく数年間運用した場合の経費までを考慮して検討されるのがよいかと思います。

無線LANのコストの問題点は、住宅用の断熱材に例えるとわかりやすいかもしれません。建築時に安価で薄い断熱材を入れてしまうと、冷房や暖房のコストが余計にかかりますし、結露によって住宅の劣化が進みます。目に見える物ではないからといって最初にコストを抑えると、結局、その後の運用コストが高額になってしまいます。断熱材と同様に、無線LANの導入時には数年間にかかるコストまでを考慮して選んでいただくことが重要だと思います。

今後、有線は無線のバックボーンに変わっていくと思います

日本の無線LAN市場で今後注力されることについてお聞かせください。

まず、冒頭でお話しした位置情報の活用です。今後、位置情報を活用したアプリケーションが開発されれば、スマートフォンユーザー向けのさまざまなサービスが提供されるはずです。海外のようにショッピングモールや工場、病院での活用を広げて進化させたいと考えています。

さらにもう1つが、人が集まっている場所でのパフォーマンスを維持するための高密度対応です。当社の最先端のAPは、本体のCPUとメモリだけでなく、2.4GHzと5GHzの周波数帯を処理する部分にもCPUとメモリを持たせています。それら3つのCPUとメモリがパラレルに稼働することで、20〜40人が一斉に端末を操作してもネットワークのパフォーマンスが落ちないように設計されています。さらに、コントロール部分を機器内部に入れてその場ですぐにコントロールできるようにしています。いかにパフォーマンスを落とさないかということに注力して開発を行っています。

今後、ネットワークにおいて無線と有線の割合はどのように変わっていくと予想されていますか?

プライマリ(主要)は無線となり、無線のバックボーンとして有線があるという形態が主流となっていくと思います。最初に企業のIT担当者が無線に期待したことは、ケーブルの配線が不要になることでした。その流れは、スマートフォンの登場によって電話用のケーブルも配線不要になったことで拍車がかかり、2015年中には有線と無線の割合が逆転すると予想されています。もちろんスイッチがなくなることはありませんが、台数比率は無線の方が増えていくと思います。

今後、有線への接続が必要になるのは大量にデータをダウンロードしなければいけないPCの入れ替え時などに限定され、通常の使用は無線になると思います。無線LAN接続で10MBのデータを送っても支障はありませんので、クライアントは無線、サーバーやネットワーク機器は有線でつながるという方向に進んでいくのではないでしょうか。

(「SKYSEA Client View NEWS vol.37」 2014年7月掲載)
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