孫子曰わく、
凡そ衆を治むること寡を治むるが如くなるは、分数是れなり。
衆を闘わしむること寡を闘わしむるが如くなるは、形名是れなり。
三軍の衆、必らず敵に受えて敗なからしむべき者は、奇正是れなり。
兵の加うるところ、タン(石段)を以て卵に投ずるが如くなる者は、虚実是れなり。
現代語訳
およそ戦争に際して、大兵力を統率していながら、小兵力を統率しているように整然とさせることができるのは部隊編成の技術のおかげである。
大勢の兵士を戦闘させても、まるで少人数を戦闘させているように整然といくのは、旗や鳴りものなどの指令の設備のおかげである。
大軍の大勢の兵士が敵の出方にうまく対応して決して負けることのないようにさせることができるのは、変化に応じて処置する奇法と、定石どおりの正法の使い分け(奇正)のおかげである。戦争が行なわれるといつでもまるで石を卵にぶつけるように容易く敵を打ちひしぐことのできるのは、充実した軍隊で隙だらけの敵を撃つ虚実の運用(虚実)がそうさせるのである。
組織内部を上手く統率する技術は、戦争全体の勝敗を決するくらい重要なものです。その技術とは、情報伝達が組織全体の隅々まで速やかに行えるか、組織内部の仕事割りはきちんとしているかということです。
組織全体を一つの有機体のように仕上げ、そして動かす技術は、将軍(管理者)にとって必要な技術である、と孫子は説いています。
企業活動が地域的広がりを持つにつれて営業所・支店・支社などが拡充され、企業の機密情報に関与する従業員数は増加します。また、それは同時に情報漏洩のリスクが増大することも意味します。
それを防ぐには、各拠点に担当者を設け、その人から現場のセキュリティ意識を高めていく啓蒙活動や、社員全員に運用ルールを浸透させることが必要です。また、リスクが発生した場合には警告したり、通報したりするシステムが必要です。
さらに各拠点と本部をつなぐネットワークを作り、各拠点の状況を人的な報告ではなく、仕組みとして見られるように整備する必要があります。
情報セキュリティ対策はそれだけで付加価値を生むものではありません。変化に対応して末端まで浸透する仕組み作り、および自動的に統制が取れる仕組みが欠かせないのです。