会社方針としてのトップダウン、あるいは現場からのボトムアップなどがきっかけで、ライセンス管理を始めなければいけない場合があるかと思います。今回から2回にわたり、ライセンス管理を始めるにあたっての、注意点や考慮するべきポイントについてお話しします。特に今回はライセンス管理を始める際、その最初の段階で見落とされやすいポイントをご紹介していきます。
はじめに
ライセンス管理を始める際に、最初に重要かつ大きなチャレンジとなるのが、すべてのハードウェア端末に対するインストールソフトウェアと、保有しているライセンスを突合する棚卸(=現状把握)かと思います。しかし筆者としては、その現状把握に入る前に、以下の3点について検討することが重要と考えます。
1、リスクアセスメントの実施
現状把握を効果的、効率的に行うためにも、組織のライセンス利用に関する現時点でのリスクの把握が必要です。具体的には、2,3の部門を選定し、ライセンスの利用と保有の把握、メディアの管理状況、調達と契約の形態、ソフトウェア導入と廃棄のプロセスを確認し、それぞれの現況と現時点で存在するリスクを確認していきます。対象部門は営業部門や管理部門とするのが一般的です。開発部門については、開発者用のユーザーライセンスの問題と、開発環境でのインストール状況の課題があるため、この段階での対象とするかどうかは十分に検討した上で判断することをお勧めします。このリスクアセスメント結果は、組織全体での現状把握を適切に実施するための、またライセンス管理体制の全体計画を検討するための原材料となってきます。
2、ライセンス トレーニングの実施
現状把握をする上でも、今後の管理体制を構築する上でも、ライセンス トレーニングは非常に重要です。対象は主にこちらの3者に分かれます。
マネージメント(役員レベル)へのトレーニング
特にボトムアップ案件の場合、マネージメント層における正しい理解がされておらず、支援や稟議が滞ることが往々にしてあります。事前にマネージメント層向けに「コンプライアンス リスク勉強会」と称して、ライセンス監査のリスクを含めた最新の状況のインプットや、経営リスクに関する認識を持ってもらい、管理体制構築に向けての地ならしを行っておくことは一つの有効な手段となります。
部門IT管理者へのトレーニング
管理しないことによるリスク、管理することのメリットや組織としての必要性の面から、「なぜライセンス管理が重要で、必要か」という点について、部門IT管理者に対して正しく理解してもらうことが重要です。現状把握の際に必要な協力を得たり、管理の運用時だけではなく、最近多い社内外へのIT関連サービスを計画する際にも、そのソフトウェア利用が適正かどうかの判断を行う上で重要になってきています。
一般従業員へのトレーニング
ソフトウェアやIT機器、IT関連サービスを導入し利用する上で、どのような点に注意すべきかを理解してもらうためのトレーニングになります。半期に一度程度、またはオンラインでの提供が現実的かもしれません。ライセンス管理もほかの管理と同じく、運用のレベルを上げようとすると、場合によっては利便性が大きく損なわれ、現場の理解が得られないこともあります。トレーニングにより、利便性はある程度維持しつつも、利用者の理解と意識レベルを上げることによって、不適切な利用を最小化することも一つの狙いとなります。
3、社内規程、手順書の把握
まず現在のソフトウェア利用やライセンス調達に関する社内規定や、手続書等の把握をしましょう。よく見受けられるケースとしては、そもそも明文化された規定や手順書がないか、陳腐化している、あるいは部分的にしか存在していなかったり、正しい運用がなされていない場合などがあります。
もちろん現状把握やライセンス管理体制を構築していく中において、既存の規定や手順は見直していくのですが、まず先に現在の姿を明らかにし、何が不足しているのか、何を変更しなければいけないのか、また規定や手順書の運用が正しく進められていないのはなぜか、という点をあらかじめ確認し、今後の組織に適合する管理規定や手順書の作成、修正をしていく必要があります。
これら3点をすべて行うかどうかは、組織の現状管理レベルや状況にもよりますが、組織にとって適切なライセンス管理体制への第一歩となりますので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

(「SKYSEA Client View NEWS vol.36」 2014年5月掲載)