IT資産管理は、当初、ハードウェア管理を中心に行われ、その後ソフトウェア管理やライセンス管理、またSAMと言われるソフトウェア資産管理へと移行してきました。最終回では、欧米でのライセンス管理の最新状況をお伝えするとともに、予測される近未来の姿、そして今、何を行うべきかについて見ていきたいと思います。
欧米での最新状況
ライセンス監査
IT利用先進国でもあり、主要なソフトウェアメーカーが本社を置く欧米では、メーカーによるライセンス監査は、日本に比べその頻度が格段に高い状況にあります。【図1】また最初から「契約書の条項に基づいた監査」として実施されることが多いと言えます。
【図1】欧米におけるライセンス監査頻度
しかも、IDC(IT専門調査会社)の最新の調査では、「近々、主要メーカーはその監査頻度を倍増させるだろう」と報告しています。この点は欧米に関係会社を置く日本企業のビジネスに影響を与えますし、監査頻度の倍増という流れについて、日本やアジアに対しても近未来の現実となる可能性が高いと予測されます。
ユーザー動向
欧米の組織においては「ソフトウェア資産管理部」や「IT資産管理部」という形で、専門部門の設置が拡大しています。また、その専門部門の責任範囲には、社内のライセンスの管理や調達業務を行うことによる、リスクの削減(SAM、ライセンス管理、監査対策と対応)とコストの削減(ライセンス調達戦略、契約交渉、ライセンス再配置)が挙げられます。【図2】
【図2】IT資産管理のステージ(契約と管理)
プレーヤー動向
欧米のツールメーカーは専門性を持っていることが多く、特に大手ユーザー組織では、必要とする業務と利用する機能によって、3〜4つの異なるツールをうまく組み合わせて利用することが一般的です。もう一つ特徴的なのは、ライセンスコンサルティングを行う専門会社や専門家の存在です。組織内の管理者が、外部の専門家と一緒に、監査対策や実際の監査へ対応したり、ライセンス契約コストをいかに最適化するか、という業務やプロジェクトを実行している点が挙げられます。
これからのライセンス管理
現在は監査対策を中心に、情報セキュリティの観点からも、SAMやライセンス管理を行われているかと思います。そんな中、一部の組織で始まりつつあるのが、ライセンス最適化の導入です。これはライセンス契約や保守契約の最適化、保有ライセンスの再配置や適切なライセンス設計を行うことにより、最適化=コストとリスクの削減や抑制を図るという手法です。これまではライセンス監査対策という1つのリスクを低減させる、という目的が主体であることが多くありましたが、今後はライセンス最適化もその目的の1つになるかと思います。
そのためには、欧米のように専門部門の設置も必要になるでしょうし、外部の専門家をうまく活用することも一般的になってくるかと思います。特に海外でのビジネスを行っている企業の場合は、グローバル監査対策やコスト最適化、ITガバナンス拡大のためにも、グローバルでのライセンス管理が求められており、そのためには担当する専門部門や専門家が必要とされます。
さらにその先を見越すと、IT資産やソフトウェアについてのライフサイクル管理と、専門企業へのアウトソースモデルが出てくるかと思います。【図3】
【図3】ライセンス管理の進化について
おわりに
前回ではSKYSEA Client Viewによるライセンス管理方法のポイントをご紹介いたしましたが、決してツールだけでSAMやライセンス管理ができる訳ではありません。適切な管理体制、運用プロセス、規定や社内教育が基本としてあり、その実行を効率化し、支援するためにツールをうまく利用することが重要です。
最後に2つだけお伝えして、本連載を終了したいと思います。1つは、もし今、ライセンス管理を行っていないのであれば、すぐに実施するべきということです。ライセンス監査は現実の問題として、明日発生するかもしれません。ますます多様化、複雑化するITサービスの波を乗り越えるには、適切な管理という乗り物が必要です。
そして、もう1つは専門家の活用です。理想としては顧問弁護士や税理士と同様に、ライセンス管理や調達の専門家を顧問に持ち、常々相談できる形にしておく形がベストです。SAMAC(一般社団法人IT資産管理評価認定協会)でもCSC(公認SAMコンサルタント)の育成を進めていますが、今後はCLM(公認ライセンスマネージャー)資格も始まりますので、是非外部リソースを適切に利用し、ライセンス管理を進めていくことをお勧めします。
本連載を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
(「SKYSEA Client View NEWS vol.39」 2014年11月掲載)