有償なのか無償なのかにかかわらず、ソフトウェアは「著作物」となるため、使用する際にはソフトウェアメーカーや個人制作者の「使用許諾(=ライセンス)」を得る必要があり、ソフトウェアを不正利用した場合は、著作権法に抵触する行為にあたります。特に有償ソフトウェアの場合、購入したライセンス数によって使用できるPCの台数やユーザー数などが決まるため、適切な「ライセンス管理」が必要となります。
しかし、実体のない無形資産であるソフトウェアは、ハードウェアのように現物と台帳を突き合わせて確認することができない上、ライセンスの正当性を証明するためにライセンス証書との紐付けが必要など、ライセンス管理を正確に行うには大きな工数が必要となります。
多大な工数が必要となるライセンス管理をあえて行うメリットは何でしょうか。まず、ソフトウェアの購入・使用が契約の一つであることから、コンプライアンスの観点で適正なライセンス管理が求められることは言うまでもありません。さらに、ライセンス不足を防ぐために保険的に余分にライセンスを保有したり、クライアントPCの異動や廃棄に伴って発生したりする「余剰ライセンス」の有効活用が促進されることで、全体としてコスト削減につながるというメリットがあります。
逆にライセンス管理が行き届かず、違法コピーされたソフトウェアが使用されてしまっているような事態に陥ると、刑事罰の対象になります。仮に、そうした事態が明るみに出なくても、不正使用しているソフトウェアは、メーカーによる製品サポートが受けられず、アップデーターの供与が受けられないため、セキュリティ上の問題が発生します。ソフトウェアを更新しないまま使用していると、ソフトウェアの脆弱性を突いたマルウェアの被害に遭うなど、外部攻撃を受けるリスクが高くなります。
管理台帳を作成するなど、形式的にはライセンス管理を行っていても、常に情報を更新しながら継続的にライセンス管理できる体制がなければ、次第に正確性が保てなくなり、ライセンス不足の状態に陥ることもあります。ソフトウェアメーカーの監査によって、こうしたソフトウェアの不正使用が指摘され、多額の損害賠償を請求されるケースも少なくありません。また、こうした事実が公表された場合、社会的信用の損失につながることも念頭において取り組むことが必要です。
このように、さまざまなリスクの軽減と、余分なコストを削減のために、適切なライセンス管理が実施できる仕組みと、限られた人員で効率よくライセンス管理を運用できる体制づくりが求められています。